――劇中には大島優子さん演じる、くノ一の火垂と忍者同士の恋もあります。
 
それも堤さんの遊び心というか、「そういうのもあっていいでしょ。その方が面白くないですか」っていう提案なのだと思いますね。
 
――火垂から、「殺したいほど愛される」関係が、ちょっとユニークです。大島さんが「あなたを殺して、私も死ぬ」って言ってましたね。
 
究極ですよね。すごいこと言うなと思いました。「どういう感覚で言ってらっしゃるんだろう」と思いましたね。
 
――実際に女性から、それくらい愛されるのはどうでしょうか。
 
えっ!?　殺されるんですよね。僕なら、「もうちょっと生きたいなぁ」って思っちゃいます。
 
――才蔵が逃げても逃げても追いかけてくる火垂ですが、そういうタイプはどうですか。男性は追われるより、追いかけたい人が多いと聞きますが……。
 
うん。そういうのってその女性にとって、あまりよくないと思いますね。絶対、そうじゃない、もっと居心地のいい関係があるんじゃないかなと思います。
 
――火垂と才蔵の関係はどう見ましたか？
 
お互い、ちょっと思い合っているのに、明確には結ばれない。ある種、遠距離恋愛のようですよね。でも、あの時代って、携帯もなければ、すぐ会えることもないだろうから、どこかで思いが通じ合っていて、そういう信頼関係があれば、成り立つ可能性がある。もちろん、会いたいという思いはそれぞれあるんでしょうけど。でも、そういった連絡手段がないからこその愛情表現の仕方があるんだなと思いますね。
 
――それをいまの時代に置き換えてみても、実現可能でしょうか。
 
どうだろうなぁ。経験がないから、何ともいえないですけど、まあ相手のことを信頼して、心底、その人に対して、思いが持続できれば可能だと思います。でも、難しいですよね。すぐ連絡取れるのが普通だから、それが急になくなったりしたら、なんかその人のことを全面的には信頼できなくなる瞬間が訪れたりするだろうし……。
 
――ちなみに松坂さん自身はまめに連絡する方ですか。
 
ぜんっぜん、まめじゃないです(笑)。
 
――霧隠才蔵って真田幸村に仕えていたとされる人物ですが、歴史上の人物を演じる際に意識したりしますか。武将好きな男性など、よくいますけど。
 
才蔵はいてほしいと思っていますね。歴史ものには興味、あります。大河(「軍師官兵衛」)に出られたときもすごくうれしかった。作品によってだとは思うんです。大河などでは、史実に基づいたうえで、作品を構成したりすることもあるので、そういう場合はしっかり歴史上の人物を調べ上げて、そこをくみ取ってやっていかないと、作品のなかで、付いていけなくなってしまうこともあります。でも、今回みたいな、ある種、エンターテインメントに特化していて、架空なのか、本当にいたのかわからないような人物を演じるにあたっては、そこに囚われすぎると、逆に浮いてしまうんじゃないかなという思いもありますね。しかも、この作品に関しては堤さんのエッセンスがたっぷり入っていたりします。だから、今回は堤さんのおもちゃ箱のなかに思いきり、入りきることが重要でした。
 
――いろんな監督のいろんな作品でいろんな役柄に挑戦しているので、松坂さんが今後、どんな風になっていくのか、ますます楽しみです。
 
どうなるでしょうね。未知数です。これからも、自分のなかのハードルを自分で上げ続けたいと思っています。