夏木マリが語る、映画『Vision』と美しく生きるコツ
2018/06/07(木)
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(c)2018“Vision”LDH JAPAN, SLOT MACHINE, KUMIE INC.

演じることを禁じられた、河瀨直美監督の現場で感じたこと

――『Vision』で、夏木さんは吉野の山で1000年生きているアキという女を演じられました。河瀨監督の作品は現場が独特だと聞きますが、ほかの現場と違うと感じられたところは?

河瀨さんの現場では、俳優が「演じること」を禁じられるんですね。監督が求めているのは、その人物が「役を生きる」ことなんです。役を作るのではなく、「その人になりなさい」ということ。そのために、今回は撮影前に2週間、吉野の山奥でアキとして生活しました。

――つまり、役者にとって、いわゆる「役作り」ができないということですね。

そうです。監督が求めているのは「役」じゃないんです。「その人になってほしい」ということなんですよね。たとえば、アキが住む家に行ったら、家財道具が全部、家の中央に置かれているんです。あれ?と思ったら、監督から、「アキさんが暮らしたいように、あなたが全部配置してね」、と言われて、びっくり(笑)。その日から、朝起きたら自分でマキを割って、火をたいて、おかゆをつくって……と、アキの生活が始まりました。撮影のときはそこにスタッフが入ってくる、という感じですね。

――つまり、現場の空気も夏木さんが担われたんですね?

はい。家にはトイレもお風呂もないので、お風呂には山を下りて20分のところの温泉にいってました。確かに健康管理とメンタルな管理が非常に難しい。でもそうすることで、朝、現場にスタッフがきたときは、アキとして迎えることができたと思います。

――とはいえ、現場に入る前にされたことはありますか?

アキは目が不自由な役なので、障がい者施設に行き、様子を拝見しました。あと、私は演じる上で、外見はすごく大切だと考えていて。ヘアスタイルが決まれば、役はだいたい決まると思っているんです。髪が3分刈りだったら、その人は何を着て、何を食べるかもわかりますよね。ただ一度現場にはいったら、それらのことはすべて忘れます。朝を迎えるごとに、どんどんアキになっていくからです。

Photo:Masahiro Yamamoto(Portrait)Stylist:Rena Semba  Makeup:Sada Ito for NARS cosmetics (DONNA)

  • 松崎健夫(まつざき・たけお)

    映画評論家。『キネマ旬報』などに寄稿し、『WOWOWぷらすと』『ZIP!』『japanぐる〜ヴ』に出演中。共著『現代映画用語事典』ほか。

  • PROFILE

    夏木マリ 今年、デビュー45年。また、クリエイションを手掛ける「印象派」が25年、支援活動「One of Loveプロジェクト」が10年、清水寺奉納パフォーマンス「PLAY×PRAY」が5年とそれぞれ周年を迎える。現在、主演映画『生きる街』が好評公開中。また、ウェス・アンダーソン監督『犬ケ島』が公開中、6/8に河瀬直美監督『Vision』の公開が控えている。著書「好きか、嫌いか、大好きか。で、どうする?」(講談社)好評発売中。

  • 『Vision』

    世界中を旅しながら紀行文エッセイを執筆しているフランスの女性エッセイスト・ジャンヌ。アシスタントの花と共にとあるリサーチのため奈良の吉野を訪れる。
    杉の木立が連立する山間で生活をしている山守の男・智(とも)は、ジャンヌが山に入ってくるという老女アキからの予言通り、ジャンヌと出会い、文化の壁を超え、次第に心を通わせていく。智と同様、山守の鈴(りん)、猟師である岳(がく)、源(げん)もまた、山に生き、山を守る。
    それぞれの運命は思いもよらぬ形で交錯していく…。ジャンヌはなぜ自然豊かな神秘の地を訪れたのか。山とともに生きる智が見た未来とは―。

    出演:ジュリエット・ビノシュ、永瀬正敏、岩田剛典、美波、森山未來、田中泯(特別出演)、夏木マリ
    監督・脚本:河瀨直美 配給:LDH PICTURES【2018年/日仏/110分/シネマスコープ】
    6月8日(金)全国ロードショー
    公式HP:http://vision-movie.jp/
    公式Twitter:@vision_movie_  

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