大人気の若手俳優! 村上虹郎、20歳の告白
2017/05/15(月)
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父との共演は不思議だけど面白い

村上虹郎は今春放送された株式会社LIFULLのCMに出演。信号待ちをする雑踏の中で「走れ!」とひとこと呟くこのCMに流れるのは、アニメ「機動戦士ガンダム」の主題歌「翔べ!ガンダム」。歌っているのは、歌手であり村上虹郎の母であるUA。ガンダム世代であるUAが、息子への力強い応援歌として「機動戦士ガンダム」を引用したのだ。
 
村上 :母の歌が使われることは、事前に知っていました。ただ「機動戦士ガンダム」は観たことが無いです。ゲームはやっていましたけど、僕らの世代にとってはリアルではないと思うんです。ストーリーは知らないですが、世代によっては引用されるほどのものであるというのは面白いですね。CMでは「ガンダム」という言葉が歌詞に出てこないことに対する意見もあるようですけど、あれはあれで面白いと思います。直接「ガンダム」って言っちゃうと「ガンダム」のCMになっちゃいますし(笑)
 
Q.そういう話題は、お家の中でも話されたりするのですか?
 
村上 :します。たぶん母は「ガンダム」世代なので「『ガンダム』やって、どうする?」と言っていましたが(笑)僕にはあまりにも無関係すぎて。
 
Q.『2つ目の窓』では、お父さんの村上淳さんとも共演されています。
 
村上 :親父は映画を撮影する数年前からやると決まっていたので、僕でなくてもやっていたはず。今回のCMとはちょっと話が違うのですが、不思議な感じですよね。例えば、監督と女優さんとか、男優と女優さんで夫婦というのはあり得るじゃないですか。そう考えると「あり得るな」と思えるんですけど、それは客観的な評価なんです。ジェーン・バーキンとセルジュ・ゲンズブールとか、ニコール・キッドマンとトム・クルーズ、ジーナ・ローランズとジョン・カサヴェテスもそうですけど、そういう形ってあり得るんだけど、どう評価すればいいのか。僕にはまだ判らないです。結果的に「面白ければいい」ということだと思うんですけど。
 
Q.奇しくも、先日出演されていた舞台『エレクトラ』のインタビューで、村上さんは「人間は家族から離れられない」と発言されていました。
 
村上 :それまで僕は古典に興味がなかったのですが、ものすごく面白い作品でした。それは古典を面白く演出する人を、これまで僕が知らなかったということです。詩的な長台詞って、日本で言うと念仏とかお経なんかに近い。日本人は基本的にシャイだし、愛を表現する言葉も少ない。僕はまだシェイクスピアやギリシャ悲劇を原文で読んでいませんが、原文で読むともっと面白いんでしょうね。この『エレクトラ』は、判り易くて人間臭い話です。物語には戦争が関わっているけれど、描かれているのはもっとドメスティックな身近な話。『エレクトラ』は“母殺し”の物語なんですが、『武曲 MUKOKU』は“父殺し”の物語ですよね。“母殺し”と”父殺し”、どちらがよりタブーなのかというと、たぶん“母殺し”の方だと思うんです。特に『武曲』のような剣の世界では、どちらかが死ぬというのはめずらしくはない。『武曲』の場合は、研吾を解放するために、父親が自ら死を選んだ。そうすることでしか、自分たちの密な関係を解き放てない。それって限りなく滑稽な愛なんです。その精神世界というのは、嗅覚的なものだと思っています。

Q.最後に、『武曲 MUKOKU』をこれから御覧になる皆様にメッセージを。
 
村上 :確実にこの映画は、ある独特のニオイを放っていて「そのニオイの範囲が広がってくれればいいな」と思っています。「そのニオイの濃度が薄まらなければいいな」とも。そのニオイを嗅ぎ取った人は、必ず観に来てくれると思います。『スター・ウォーズ』の話をしましたが、実はこの映画は何かに例えたり出来ない。オリジナリティがあるし、唯一無二なんです。だから、観て頂ければ必ず何かを感じ取って頂ける、そんな映画になっています。

Text: Takeo Matsuzaki Photo: Masahiro Yamamoto(Portrait)

  • 『武曲 MUKOKU』
    鎌倉で幼い頃から剣道の達人だった父(小林薫)に鍛えられてきた矢田部研吾(綾野剛)。彼は父にまつわるある事件をきかっけに生きる気力を失い、どん底の生活を送っていた。そんなある日、研吾のもう一人の師匠(柄本明)が彼を立ち直らせるため、剣の道に魅せられた少年・羽田融(村上虹郎)を送り込むのだが…。藤沢周の同名小説を原作に、『夏の終り』(13)に続いて綾野剛と熊切和嘉監督が組んだ作品。本作で村上虹郎は、やがて綾野剛と剣を交え、決闘することとなるラップのリリック作りに夢中な少年を演じている。
    2017年6月3日(土)より全国公開
    http://mukoku.com

  • 松崎健夫(まつざき・たけお)
    映画評論家。『キネマ旬報』などに寄稿し、『WOWOWぷらすと』『ZIP!』『japanぐる〜ヴ』に出演中。共著『現代映画用語事典』ほか。

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