話題沸騰!「山田孝之のカンヌ映画祭」衝撃の舞台裏に迫る
2017/02/17(金)
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下見でカンヌを訪れた二人は、レストランで海鮮料理を堪能!

映画監督が考えるドキュメンタリーならではの魅力とは?

松崎: お二人は「ドキュメンタリーに対する考え方が違うのではないか?」と僕は思っているのですが、お互いどのように捉えられていらっしゃるのでしょう。
 
山下: ドキュメンタリーが面白いのは、何も決めずにお互いが演出し合うからなんだと思いますね。
 
松崎: 一方、松江さんはドキュメンタリーを主にやっていらっしゃいますが、いかがですか?
 
松江: ドキュメンタリーが、例えば一般の人たちの考えているような、真実や世の中の事実を映し出すものだとは全然思っていないです。僕にとっては、映画の手法のひとつとして、自分が面白く作れると思うものがドキュメンタリーなんですね。劇映画はドキュメンタリーとは違って作り込まなければならないので、いろいろと拘りますよね。だから劇映画をやっている山下君と出会って「なんでこんな面倒くさいことやっているんだろう?」と思っていました(笑)。でも、山下君は役者の芝居見るのが本当に好き。だから役者も、山下君に演出されるのが好きなんだなと思うようになって。そういう姿を見ていると、「僕は飽き性だからできないな」と感じます。生っぽいものを優先したり、本当に作ればいいと思っている僕とは拘りが違うんです。

映画のプロモーションフィルムを撮影中。右は主役の芦田愛菜ちゃん。

山下: 以前、松江君に膨大な量の映像を撮って、判らなくなってしまって撮ったものを丸投げしたら、松江君が「面白いな」と言って編集で繋いだ。すると流れができて、ゴールが見えた。いつもは台本があるんですけど、ドキュメンタリーは台本がないから、素材がシナリオになる。それをどう組み替えていくかということなんですね。当たり前のことですが、台本が後で出来るというのがドキュメンタリーなんだと気づいたんです。
 
松江: ふとした表情だったり、たまたま入ってきた偶然な要素とか。ドキュメンタリーはそれが決定的なカットになるんです。劇映画を作っている人からすると「これ、台本にないけどどうしましょう?」という風になることが、「やっちゃえばいいじゃん!」という点で、ドキュメンタリーはいちばん自由な映像作りだと思っています。ただ『カンヌ映画祭』は別。「ドキュメンタリーってこんなに不自由なんだ」という壁にぶつかっています(笑)。
 
松崎: 映画が主戦場という印象のお二人にとって、テレビ番組であるという点については何か思うことはありますか?
 
山下: 結局は「誰とやるか」。テレビだろうが映画だろうが関係ない。ただ、どこか映画は自分のベースだなと。テレビで放送されるという影響力の違いは感じますが、テレビ業界と映画業界で分けるというような意識はありません。
 
松江: 僕はテレビを意識しますね。どこでやるのかという点がすごく大きいです。例えば映画とテレビでは、観ているお客さんが全然違うので、放送時間も意識します。それぞれの役割があると思うんですよ。表現方法もテレビだからできることがある。『カンヌ映画祭』は絶対にテレビでないといけないと思っていて、映画ネタだからこそテレビでやることがすごく大事。もし映画でやったとしたら、内輪ウケで盛り上がるような閉じたものに見えるのではないかと思います。

  • (C)「山田孝之のカンヌ映画祭」製作委員会

    「山田孝之のカンヌ映画祭」
    2016年夏、俳優・山田孝之に呼び出された山下敦弘監督は、彼から「世界最高峰のカンヌ映画祭で賞を取りたい」と告げられる。ふたりはそのことをきっかけに、カンヌで賞を取るための映画製作を開始するのだが……。
    テレビ東京・テレビ大阪ほかにて 毎週金曜日 深夜0時52分より放送中(地域によって放送日時が異なります)
    http://www.tv-tokyo.co.jp/yamada_cannes/

Text: Takeo Matsuzaki

  • 松崎健夫(まつざき・たけお)
    映画評論家。『キネマ旬報』などに寄稿し、『WOWOWぷらすと』『ZIP!』『japanぐる〜ヴ』に出演中。共著『現代映画用語事典』ほか。

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