話題沸騰!「山田孝之のカンヌ映画祭」衝撃の舞台裏に迫る
2017/02/17(金)
> <

1/5

芦田愛菜が殺人鬼役!? そもそも「山田孝之のカンヌ映画祭」って……

『山田孝之のカンヌ映画祭』は、俳優・山田孝之が2015年1月に放送された『山田孝之の東京都北区赤羽』に続いて、山下敦弘監督、松江哲明監督と組んだ“連続ドキュメンタリードラマ”。『山田孝之の東京都北区赤羽』は、ある映画の撮影中に、役と自分自身とを切り離せなくなった山田孝之が、いったん俳優活動を休止。突如東京都の北区赤羽に移り住むという、2014年夏の姿を記録した全12話の番組だった。「山田孝之のキレっぷりがヤバい」或いは「どこまでが本当なのか?」といった視聴者の感想がSNS上で議論され、山田孝之の予測不能な行動や赤羽に住む少し変わった人々の姿が話題となった。
 
『山田孝之のカンヌ映画祭』もその延長上にある番組で、撮影は2016年の6月20日から始まっている。東宝スタジオで、ドラマ『勇者ヨシヒコと導かれし七人』撮影中の山田孝之に呼び出された山下敦弘監督は、山田から「世界最高峰の映画祭、カンヌで賞を取りたい」と突如告げられる。しかも俳優としてではなく、プロデューサーとして映画を製作したいと提案する山田に山下監督は困惑。勇んだ山田は、映像制作のために「合同会社カンヌ」という名称の会社を設立。実在の連続殺人鬼エドモンド・ケンパーを題材に主演俳優も既に決めており、山下には監督を引き受けて欲しいと企画を語り始めるのだった。
 
 第1話の終盤では、山田孝之と山下敦弘監督が主演俳優と顔合わせする場面が映し出される。そこに現れたのは、12歳になったばかりの芦田愛菜。芦田愛菜が連続殺人鬼を演じるの!? という驚きの展開で、第1話の幕が閉じたのであった。

 東宝スタジオの控え室に偶然現れる俳優のムロツヨシ。映画製作を学ぶために訪れた日本映画大学。そこで講師を務める東京国際映画祭プログラミングディレクターの矢田部吉彦、教授であり映画プロデューサーである安岡卓治、学部長であり映画監督の天願大介、学長であり映画評論家の佐藤忠男。実在の場所や人物が登場することで、あまりに突飛な展開ながらも、視聴者は「ここで描かれていることは本当なのではないか?」と虚実の境界線が判らなくなってしまうのがこの番組の最大の魅力。
 
 その特異な一例を挙げるならば、山田孝之が設立したとされる「合同会社カンヌ」の名称をGoogleで検索してみると、とても興味深い検索結果が表示されるので、一度試して頂きたい。また、番組ナレーションを長澤まさみが務めるなど、深夜ドラマらしからぬキャスティングも話題となっている。
 
 ちなみにカンヌ国際映画祭は、フランスの避暑地カンヌで毎年5月に開催されている映画祭。現在はパルム・ドールが最高賞にあたり、審査員特別賞をグランプリとしているのが特徴。今年第70回を迎える歴史の中で、衣笠貞之助監督の『地獄門』(53)、黒澤明監督の『影武者』(80)、今村昌平監督の『楢山節考』(83)と『うなぎ』(97)、4本の日本映画がパルム・ドールに輝いている。2007年には河瀬直美監督の『殯の森』がグランプリに輝いているが、言い換えれば『うなぎ』以来、日本映画は20年間もパルム・ドールと縁がないのである。つまり、映画製作経験の無い山田孝之が、いきなりカンヌの最高賞を狙うのは、かなり無謀なことなのだ。

  • (C)「山田孝之のカンヌ映画祭」製作委員会

    「山田孝之のカンヌ映画祭」
    2016年夏、俳優・山田孝之に呼び出された山下敦弘監督は、彼から「世界最高峰のカンヌ映画祭で賞を取りたい」と告げられる。ふたりはそのことをきっかけに、カンヌで賞を取るための映画製作を開始するのだが……。
    テレビ東京・テレビ大阪ほかにて 毎週金曜日 深夜0時52分より放送中(地域によって放送日時が異なります)
    http://www.tv-tokyo.co.jp/yamada_cannes/

Text: Takeo Matsuzaki

  • 松崎健夫(まつざき・たけお)
    映画評論家。『キネマ旬報』などに寄稿し、『WOWOWぷらすと』『ZIP!』『japanぐる〜ヴ』に出演中。共著『現代映画用語事典』ほか。

SHARE THIS ARTICLES

前の記事へセレブコラム一覧へ次の記事へ

CONNECT WITH ELLE

エル・メール(無料)

メールアドレスを入力してください

ご登録ありがとうございました。

ELLE CLUB

ようこそゲストさん

ELLE CLUB

ようこそゲストさん
ログアウト