特集 2016/1/3(日)
トレンドイインサイト 5

世界のガストロノミーで、タイ料理が躍進中!

「アジアのベストレストラン50」といったランキングで、タイ料理のレストランが快進撃。屋台料理のイメージも強いタイ料理だが、世界に認められるのはどんな料理なのだろう?

左 タイ料理の研究家として本の執筆も行うデビッド・トンプソン。 右 彩りも美しい、クリーミーな「発酵魚と豚肉のココナッツクリーム煮」。

今最も勢いのあるファインダイニングが名を連ねる「アジアのベストレストラン50」のランキングで、2014年に1位に選ばれ、今年も7位にランクインしているバンコクのタイ料理レストラン「ナーム」。ほかにも、同じバンコクから、3軒のタイ料理レストランがランクイン。今、世界のガストロノミーシーンでは、タイ料理に熱い視線が注がれているらしい。
 
19世紀の古い文献を基に
本物のタイの味を探求
 
「アジアのベストレストラン50」でトップに躍り出たのと同時に、「世界のベストレストラン50」でも13位に選出された「ナーム」。もともとはロンドンに本店を構え、タイ料理で初めてミシュランの星を獲得した店としても知られている。名実共に世界中に数あるタイ料理レストランの頂点に立ったのは、オーストラリア出身のシェフ、デ
ビッド・トンプソンだ。「1986年、23歳で初めて本場のタイ料理を口にした瞬間、まるで遺伝的時限爆弾が爆発したかのような衝撃が走りました。多様な食材や調味料が織りなす味のハーモニーやテクスチャー、その巧みなバランス感覚は、それまで味わったことのないものでした」
 
熱に浮かされるようにタイの食文化の探求を始めたデビッド。庶民の胃を支える屋台を食べ歩き、生鮮市場へ出かけ、大きなインスピレーションを受ける日々。そんななかで出合った本が彼に強い影響を与えた。それは、19世紀後半頃からタイでは慣例になっていたという、人が亡くなる際に書かれた「死者の本」。さまざまな趣味や慣習が記され、なかでも文化の中心となる料理のレシピが、多くの本に含まれていた。これらの古いレシピが「最も貴重な財産になった」と語る。
 
外国人シェフのタイ料理というと、外国人の舌に合わせたフュージョンと思われがちだが、デビッドは、古い文献を基にとことん「本物のタイ料理」を追求。パイナップルなど酸味のあるフルーツの上に甘辛い餡をのせた前菜「マーホー」などは一見創作料理のようだが、実は昔ながらの料理だ。オリジナルの味を尊重して、辛い料理は辛いまま提供し、スパイスの調整には応じない。また、料理は大皿で提供されるため、同じテーブルで別々のコースをオーダーすることはできない。
 
「タイでは昔から“みんなで分け合う”という文化が根付いていて、家庭ではひとつの料理を分け合って楽しむ。そのシェアし合う精神に、温かい思いやりの心を感じるのです」 アユタヤ王朝の寺院をイメージしたというレンガ造りのエキゾティックな内装は、究極にモダンでシックだが、大皿にのった料理が運ばれてくるとアットホームな雰囲気が加わる。店名の「ナーム」とはタイ語で“水”を意味し、思いやりという言葉は「ナームジャイ(水+心)」という。タイ文化を敬愛して止まないというデビッドの「ナームジャイ」が、ここに表れている。

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text: Chinami Hirahara

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