特集 2015/8/31(月)
シェフ・松嶋啓介氏と元globeのマーク・パンサー氏が手がける

料理だって芸術だ! ニース料理×音楽、レストランを文化発信の場所に。

外国人最年少でフランスのミシュラン1つ星を獲得したことで知られる松嶋啓介さん。そして、globeの一員として90年代日本のミュージックシーンの立役者の一人となったマーク・パンサーさん。その2人が、なぜか南仏ニースでビストロをやっているらしい……そんな噂を聞いて、ビストロ「エコール・ド・ニース」を訪ねた。

松嶋啓介(まつしま けいすけ)
1977年福岡生まれ。20歳で渡仏し、2002年の25歳の時、フランス・ニースにてレストランをオープン。3年後の2006年、28歳の時にフランスのミシュラン一つ星を獲得。これは、外国人としては最年少の記録だった。2009年6月には東京・原宿でもレストランをオープン、2012年にニースにビストロ・エコールド・ニースを3人の共同オーナーでオープンし、2014年にはニースで3店舗目となる魚介類を専門とした「ポセイドン」をオープン。

“エコール・ド・ニース”って何?
 
---そもそも、どうして「エコール・ド・ニース」という名前をつけたのですか? エコール・ド・ニース(ニース派)とは、1950年代後半にニースを拠点に活躍した現代アーティスト達のことですよね。
 
松嶋さん:長年ニース派の人たちと交流があるんです。お店(※ニースにある「keisuke matsushima」のこと)に来てくれたり、展覧会のオープニングに呼んでもらったり。そうしているうちに、ニース派の人たちに「Keiもニース派だから、仲間に入れ」と声をかけてもらいました。最初は、いわゆるアーティストではないし、と戸惑いがあったのですが「何言っているんだ、お前こそアーティストだよ」と言われて。そういえば確かに自分もニース在住だし、ニースの現代アーティストみたいなものなのかなと思ったんです。料理も芸術の一つだし、現代的なニース料理を作っているという自負はあります。だから、ニース派の人たちは仲間に誘ってくれたのかなと。そういう話をマークとしている時に、ニースのコンテンポラリーな料理、ニースの音楽、ニース派や今の若いニースのアーティストの作品を発表する場があれば、と考え始めました。ニース派とは、ニースの料理やアートの歴史の流れを汲んだ上で、それを現代の解釈で発信し続けている人を指すと考えています。そんなニース派を継承してければいいなと思ったんです。

上:料理長を務める、京都出身の関シェフ。箱根オーヴェルジュ・オー・ミラドーなどで経験を積んだのち、ビストロ・エコール・ド・ニースの開店とともに2012年に渡仏。 下左:「牛肉タルタルのニースバーガー。照り焼きわさびのソース、フライドポテト、アイオリソースを添えて」17ユーロ。 下右:「バシリコのバターソース味、ニース風野菜のファルシー」8ユーロ

ニースの料理・音楽・文化とは?
 
---現代的なニース料理とはどんなもの?
 
松嶋さん:ビストロではニース料理として本に載っているようなレシピはすべて試しています。しかし、昔の料理は重すぎるので軽く。現代人の好みには合わせています。軽くて繊細にはしているけれども、食べている味はニースがずっと伝えてきたもの。素材の組み合わせなどは変えていません。もう家では作りたくないと言われるような煮込み、今ではあまり作られなくなったメニューなど、伝統的なものを積極的に取り入れています。昔ながらの家庭の味を守るという目的もあるんです。今10歳ぐらいの子に「ここがママの味」と言ってもらえるようなお店を目指しています。
 
----------そんなニース料理の魅力とは?
 
松嶋さん:この気候風土が育んでくれる自然の恵みです。四季がはっきりしており、山も海も近くにある中で取れる食材は滋味深い。ハーブの豊富さも大きな魅力のひとつです。お客さんが今一番求めているのはその土地の料理、根っこのある料理ではないでしょうか。

マーク・パンサー 
1970年、フランス・マルセイユ生まれ。コルシカ島出身のフランス人の父と、日本人の母を持つ。1986年に集英社「メンズノンノ」初代専属モデルとしてデビュー。同誌で7年間モデルを務めたのち、1991年より音楽活動をスタート。「MTVジャパン」の初代VJを経て、1995年から小室哲哉プロデュースの「globe」メンバーとして20年間活動。現在はフランス・ニースを拠点にDJ活動を行っている。

---ニース音楽、ニースの現代音楽とはどんなものですか? 
 
マークさん:ニース音楽は、歌とフルート、ひょうたん型の楽器を使ったものが基本です。それを今風な音とリミックスして、自分流にアップデートしています。また、伝統的なニース音楽の後にストロマエなど流行りの曲をかけたりして、そんなギャップを楽しむという手もある。
そう考えていくと、料理と音楽は似ているかもしれないですね。素材がよければ素晴らしい音楽が作れるけれども、素材がよくなくてもリミックスで面白い音楽が作れる。一皿をつくるのも、一つの音楽をつくるのも同じではないでしょうか。
 
松嶋さん:料理も音楽も古い資料に当たったり、掘り下げてみると面白い。実は大昔のニース音楽には歌詞に食材のことがしょっちゅう出てきます。コルジェットがなんとか、かぼちゃがなんとか、、とか。
 
マークさん:食と音楽は繋がるよね。
 
---そもそもお二人のコラボレーションのきっかけは?
 
マークさん:3年前からお店によく行くようになって、娘同士も歳が近いし家族ぐるみのお付き合いが始まりました。お互いに日仏を行き来しているライフスタイルも似ていて。だいたい、レストランか美術館のどちらかで会うよね。
 
松嶋さん:お互いに料理もアートにも興味があるし、僕は料理からのアプローチ、マークは音楽からのアプローチと、違う視点からものを見るので面白い。アイデアに煮詰まると一緒に美術館に行ったりしますが、違う分野だからこそ刺激し合えるのがいいんです。
 
マークさん:最近、面白いぐらい似ているなぁと思うんです。料理人でこんなに音楽に詳しい人もなかなかいないでしょうし。家に行くとこんなCD聞くんだーって驚きます。

絵画や彫刻に囲まれたアートな空間に学校の机と椅子の組み合わせが新鮮。美術学生になった気分で、リラックスして食事が楽しめる。

文化発信の場としてのエコール・ド・ニースが目指すもの。そして、ニースの魅力とは。
 
---お店のインテリアも凝っていますよね。
 
松嶋さん:お店では、ニースを堪能してもらいたいんです。そういう意味もあって、ニース派だけではないマティスやシャガールの作品も飾っており、美術、料理やワインを含めたニースの文化や歴史がわかる「教育」の役割も果たしています。だから椅子も中学や高校で使うものを揃えているんですよ。
 
---ニース派を知らない人がビストロ「エコール・ド・ニース」と聞くと、学校なの?レストランなの?と戸惑う人も多いかと思いますが、学校でありレストランなんですね。
 
松嶋さん:そうなんです。ニース料理の味を学んで、歴史を学んで、音楽やアートを学んで帰ってもらえたらいいなと。
 
マークさん:僕は人生の中で一番嫌いなのが学校だけれども、ここだったら続けられそうです(笑)
 
---いわき市にも「エコール・ド・ニース」がありますよね。
 
松嶋さん:普段フランス料理をあまり食べない人に、いわきの食材で作ったニース料理を食べて、刺激を受けてもらいたいんです。また、地元の農家の人が自分たちの食材が世界で勝負できると思ってもらうきっかけになってくれればいいなと。そしてたまにはニースにも来てみたいなと思ってもらえたら嬉しいです。「エコール・ド・ニース」の東京店も出したいと思っていて、今計画中なんですよ。
 
---そんなニースの魅力とは?
 
松嶋さん: やはり自然につきますね。海も山もあって。インスピレーションを受ける場所としては最適です。ほどよく都会でもあるし、非常に国際的な場所なので面白い。
 
マークさん:ニースみたいなところって、他にはないのではないでしょうか。保守的な町でもあるし、色々と大変なことはあるけれども、暮らしていく中で日々学ぶことがある。あとは気候がすごいいいし。僕自身はコルシカ島と日本とのハーフで、マルセイユ生まれで東京育ち。幼いころニースに住んだことはありませんでした。でも「エコール・ド・ニース」を始めてから、ニース料理は心に刻まれたよね。

地中海とアルプスに挟まれたコートダジュールは、両方のいいとこ取りができる恵まれた場所。なかでも自然と都会がほどよく同居したニースには、刺激と癒しを求めて、世界中から人が集まってくる。

食においても、海の幸と山の幸を堪能できるという贅沢な環境で、アルプスからくる良質な水と燦々と降り注ぐ太陽も、野菜や果物を豊かに実らせてくれる。 もし訪れるなら、そんなニースの魅力をさらに味わってみては?
 
>>次ページでは、松嶋さんおすすめのグルメ・アドレスをご紹介!

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photo :  Loïc Thébaud   text : Wakana Kawahito

UPDATE: 2015/09/02(水)

SHOP INFORMATION

店名
エコール・ド・ニース
住所
France Nice 16 rue de la Buffa, Nice FranceGoogle Mapで確認
電話番号
33(0) 4 93 81 39 30

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