娘、ナタリーが語る、「ニットの女王」ソニア・リキエルの素顔
2016/11/19(土)
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ソニア・リキエル46歳のときのポートレート。1976年撮影。

”毒親”だった母の呪縛と、共依存の闇

ELLE :あなたたちは一卵性母娘だったといえる?
 
ナタリー : ええそうね。だからと言って、私が夫や子どもを得て家族を持つことへの妨げにはならなかったわ。私と母は常に一緒に働き、まわりからは”ドリーム・チーム”じゃなく、”クリーム・チーム”(融合したクリームのようだから)と呼ばれていたの。毎日会っていたけれど、一日に何回も電話で連絡を取り合っていたわ。たとえ旅行中だとしても、私は母が元気なのか、体調が悪いのかをタイムリーに熟知していました。でも、すごく幸せというわけではなかった。母について素晴らしいというイメージは持っていたけれど、彼女のことを女神のように崇めていたわけじゃないわ。母の落ち度や弱さを知っているし、ときにどうしようもないくらいの愚行で打ちのめされていたから。母は本当に、本当に人間味のある女性でした。 
 
ELLE : 彼女の弱さはなんでしたか?
 
ナタリー : 母はコントロール・フリークでした。とっても嘘つきで、そのうえ声が大きくて主張が強い。母はロシアの悲劇女優で、彼女の人生は自分が演出する演劇だったんです。力をもつ男性にとても影響を受けていて、権力に取り憑かれてもいた。「そんなこと私たちにはどうでもいいわ!」って母に叫んだこともあったわ。

2008-09秋冬コレクションのバックステージで、ソニアとナタリー、そしてリアーナとの3ショット。多くのセレブがソニアを心から敬愛していた。

ELLE : あなたたちは似ていますか?
 
ナタリー : まったく似てないわ。むしろ正反対。彼女が夜なら私は昼、彼女は暗くて、私は笑うのが好き……など、すべてこんな感じだったわ! このことについて私はたくさん考えたし、母とのつながりを断ち切らなきゃと思ったことも正直ありました。大人の女性になることや、自分自身を探すことにすごく時間がかかたけれど、 時間をかけたぶん今は、私と母は特別な関係だったと言うことができるの。彼女は自己利益を優先する貧欲な母親だったので、私がそばから離れることを決して許さなかった。私は彼女とは真逆で、娘たちが私のもとを巣立つためになんだってやるわ。そこがもうひとつの大きな違い。
 
ELLE : 「大人になるのに時間がかかった」とは、どういう意味ですか?
 
ナタリー : 官能的なことに溺れる母親と一緒に女性になるのは難しいわ。母はとても男性が好きで、いつもまわりにはたくさんの男たちがいたの。魅力は彼女の絶対的な武器でした。最期の日まで、彼女は支配し愛される必要があり、息が途切れるその瞬間まで、男性が病室に入ってくると目の中に輝きが灯っていたわ。 

ソニア51歳のときのポートレート。赤いボブカットにノーメイク、愁いを帯びたポーカーフェイスは彼女のトレードマークだった。1981年撮影。

ELLE : そんなにも女性らしい彼女が、なぜあなたに一度もアドバイスを与えなかったんですか?
 
ナタリー : 母は多くの人たちに女性になることを教えたけれど、私には一言のアドバイスもなかったわ。彼女にとって、女性らしさのための具体的な手段は必要なく、メイクをするのも美容院へ行くのも嫌い。根本的に男っぽい性質だったんです。いわゆる女性らしさというものを母から学ばなかったおかげで、私の思春期は壊滅的だったわ。自信がない私は母の陰に隠れてばっかりで、母のオーラを見ることが私の喜びでした。父の死後、ある日、母はファッションショーに出てみない?と私に提案し、無理やり私を戦いの舞台へと押し出したんです。そうして私は人の目に晒されることで綺麗になり、母が望むような女性になったんです。
 
ELLE : もはや自分から離れていくことがないように……。こうやって、多くの役割を担うであろうメゾン・リキエルに入ったんですね。
 
ナタリー : 母は私に一度も武器を与えてくれなかったから、私は自分ひとりで頑張るしかなかったの。一度たりとも罵り合うことはなかったけれど、母は私に抵抗されることが怖かったのよ。母は天才的デザイナーだったけれど、経営者としてはうまく生きることができなかったんです。私が母の代わりに経営者になるしかないとわかったとき、母のなかには葛藤がありました。経営が軌道に乗った後、母は私に感謝したけれど、それはお互いにとって痛みを伴う苦しい時期だったわ。とにかく母は皇帝のようだった。何も分かち合うことなく支配する女帝。 

Photo: GETTY IMAGES  Interview: OLIVIA DE LAMBERTERIE

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