●“好きなこと”“本当にやりたいこと”は見つからなくてもいい
新しい働き方。その担い手として、全国の大学を廻って話をしているそう。これから働こう、もしくは働き始めている人たちにアドバイスをお願いしたところ、面白い回答が……。
「みんな、なんで“やりたいこと”“好きなこと”を探すんだろう?と思うんです。夢を持つのは大事です。でも、私はイチローのように小さな頃からプロ野球選手になりたいというように夢を持てたわけじゃありません。今だってそうです。『やりたいことをやりなさい、好きなことを見つけなさい、夢を持ちなさい』と私たち世代は言われて育ってきた。でも、見つからない人だっているんです。むしろそれがコンプレックスになってしまって、焦ってしまい、自己嫌悪に陥っている学生さんが今、すごく多いと感じています。好きなことがなくたって、やりたいことが見つからなくたっていい。SNSでもいい、リアルでもいい、いろんな人と繋がって、仲間を作って、与えられた役割を一生懸命こなせばいいじゃない、と。
キャリアを作るのに大事なことは“たまたま”ということ。いろんな人に話を聞くとよく言われるんです。『(今の仕事をしているのは)たまたまだ』って。大学生も大人もみんな『一本道』を進まなければならないと思っている。例えば『本が作りたい』→『出版社に入ろう』→『出版社にすべて落ちてしまった』・・・・・・じゃあ、就職浪人すればいいと言うんでしょうか?
入口はひとつじゃない。入口に思えなくても、今やっている仕事が『こんなはずじゃなかった』と思えても、目の前のことをいろいろ行動していたら、たまたま目にした情報や、たまたま出会った人のおかげで、たまたまきっかけがあってやりたかった仕事に出合えたりする。これはアメリカのキャリア理論として確立されていて『Planned Happenstance(注1)』、“計画された偶然性理論”というんですけど、先行きが見えない時代においては、5年後、10年後“こうあるべき”“こうじゃなくてはダメ”とあまり決めても意味がなくて、好奇心を持っていろいろなことをやっているうちに、“たまたま”がつらなって(やりたかった)仕事に巡り会えたりする。
でも、代わりに大事なのは、自分のプロフィールや自分のPRはきちっと作っておくこと。不安がる人に、不安がらせないように発信のベースはきちっと作る。実績ができたらすぐに更新する。何を考えているのか、たとえわずか140文字しかないツイッターでもきちんと書く。私はそうしています。これがないと『私は●●です』『私は●●を考えています』といくら言ってもわかってもらえません。
私は20代、自分探しをしても見つからなかった。『やりたいことはこれだろうか?』と思ってやってみても、やっぱり違ってすぐにまた別のものを探して……。そんな私が今、SNSなどでたまたまつぶやきを見ていてくれた人と繋がっていろんな仕事が出来ているということは、すごくわくわくすることだと思うんです」
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注1:スタンフォード大学の教授によって1999年に発表された理論。「今あるキャリアの大半は、予期せぬ偶然に因るものである」とする考え方。「計画された偶然」「意図された偶然」などと訳される。
Photo : Kaoru Aoki
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安藤美冬(あんどう・みふゆ)
株式会社スプリー代表。1980年生まれ、東京育ち。慶応義塾大学卒業後、(株)集英社を経て現職。ソーシャルメディアでの発信を駆使し、肩書や専門領域にとらわれずに多種多様な仕事を手がける独自のノマドワーク&ライフスタイル実践者。『自分をつくる学校』学長、スマホ向け放送局『NOTTV』の「テレビをほめるYESTV」レギュラーMC、講談社『ミスiD(アイドル)2014』選考委員、雑誌『DRESS』の女の内閣 働き方担当相などを務めるほか、商品企画、連載執筆、コメンテーター、講演、広告出演など幅広く活動中。TBS系列『情熱大陸』、NHK Eテレ『ニッポンのジレンマ』、フジテレビ『Mr.サンデー』などメディア出演多数。著書に『冒険に出よう』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)がある。公式ホームページ:http://andomifuyu.com/
Twitter: https://twitter.com/andomifuyu