●働き続けるために、モノを持たない
たくさんのモノが散らばっているようで、スッキリしているデスク。現在、“ノマドワーカー”の星として話題の安藤美冬さんの自宅にお邪魔した。なぜスッキリしているように見えるのか。分析すると積み上げられたり、縦に並んでいるものがない。ありがちな書類の束や、絡み合った配線などが見つからない。どれくらい整理収納術に長けているのかと尋ねてみると、ポイントはそこではないよう……。
「私が26歳のとき、会社を立ち上げる前に勤めていた会社で抑うつ状態になり、半年間休職したんです。思うように仕事ができない自分への苛立ちと、オーバーワークで……。そのアクシデントがあって、『私は結婚も出産もライフプランにある、でも仕事も続けたい。どうしたらストレスのない働き方ができるのか?』と、すごく考えました。仕事もしたい、家庭との両立もしたいと思うと、いろいろな職業が排除される。店舗を持つとか、在庫を抱えるとか、場所に縛られる仕事は難しい。そこで企画を出したり、文章を書く事ならデジタルデバイスの発達により、ある程度どこでも仕事ができると思いました。
そうして、29歳の時に独立することを考え始めたんですが、そこでいろいろな経営者を含め様々な方たちに話を聞くことにしました。その過程で、固定費をかけすぎたがゆえにダメになっていく会社をたくさん見聞きしたんです。オフィスにお金をかけすぎた、社員を雇いすぎたなどなど、たくさん“抱えすぎた”ために立ち行かなくなる。だったら、最初から身軽でいることが、もっとも仕事を長く続ける秘訣だと思いました。
今、私にはアシスタントがひとりいますが、社員ではなく業務委託契約です。もちろん、彼が食べていける分は自分が食べられなかったとしても、お支払いしてきましたよ(笑)。
本のプロデュースもしていますが、私とフリーの編集者さんと出版社の方で、プロジェクトごとに集まって、終わったらその都度解散する形です。『ルパン三世』のキャラクターみたいに、何かが起こったら集まる、みたいな……。つまり、(仕事をするのに)持ちすぎないことで、いつでも手放して次に進むことが出来るんです。
だから、本も本棚3段分しか持たない。1日1冊は本を読みますが、読んだら誰かにあげる。服も、喪服やコートも含め、通年で30着しか持たないことにしています。靴は6足。買うものが出てきたら、ひとつ捨てるという感じです。でも、必ずしも新陳代謝を意味しているわけではなく、お気に入りの『リーボック』のデッドストックは¥8000で購入し、¥4000かけて修理してずっと履き続けています。ものは大事にしたいですから」
>>ファッションについて、安藤さんの持論は次のページで!
Photo : Kaoru Aoki
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安藤美冬(あんどう・みふゆ)
株式会社スプリー代表。1980年生まれ、東京育ち。慶応義塾大学卒業後、(株)集英社を経て現職。ソーシャルメディアでの発信を駆使し、肩書や専門領域にとらわれずに多種多様な仕事を手がける独自のノマドワーク&ライフスタイル実践者。『自分をつくる学校』学長、スマホ向け放送局『NOTTV』の「テレビをほめるYESTV」レギュラーMC、講談社『ミスiD(アイドル)2014』選考委員、雑誌『DRESS』の女の内閣 働き方担当相などを務めるほか、商品企画、連載執筆、コメンテーター、講演、広告出演など幅広く活動中。TBS系列『情熱大陸』、NHK Eテレ『ニッポンのジレンマ』、フジテレビ『Mr.サンデー』などメディア出演多数。著書に『冒険に出よう』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)がある。公式ホームページ:http://andomifuyu.com/
Twitter: https://twitter.com/andomifuyu