実は裏設定で舞台を福岡にしてあるんです。
――松居監督は福岡出身ですが、池松壮亮さんも福岡出身です。さらに共演者の高杉真宙さんも、光石研さんも福岡出身者。そこにも僕はバディ感があるように感じたのですが、意図してキャスティングされたのでしょうか?
明確には説明していませんが、実は裏設定で舞台を福岡にしてあるんです。明確にすると福岡以外の人は冷めてしまいそうだな、と思って何となくしれっと描いています(笑)。高杉くんが演じている宗太は、福岡生まれ福岡育ちという設定で、バリバリの博多弁にしています。あとは海の向こうに韓国があるということも理由のひとつです。
――その韓国の女優さんであるキム・コッピさんを起用しているのは、この映画で大きな意味を持っていますよね。
韓国で僕の映画を上映する会があって「誰か会いたい人はいますか?」と聞かれたので、単純にファンだったキム・コッピさんの名前を挙げたんです。すると、彼女が会場に来て下さったんですよ! それでトークショーをして、イベント中に「僕の映画に出て下さい」と御願いしたら「台本、待ってます」と言って下さったんです。この映画の役は、もともと日本人の女の子の役だったのですが、その日に書き換えました(笑)。彼女が加わったことで、元々書いていた話からは想像できない、全く違うものになりました。
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『君が君で君だ』
愛する女性のために、尾崎豊、坂本龍馬、ブラッド・ピットになりきり、自分を捨てた3人の男たちがいた。彼らはお互いを「尾崎」「龍馬」「ブラピ」と呼び合い、10年間に渡って彼女の棲む部屋の向い側に部屋を借り、静かに見守り続けていたのだ。ところがある日、平穏だった彼らの日常は混乱をきたすことになる…。松居大悟監督と主演の池松壮亮は、これまでも『自分の事ばかりで情けなくなるよ』(13)や『私たちのハァハァ』(15)などでも組んできた仲。尾崎を演じる池松壮亮のほか、龍馬に大倉孝二、ブラピに満島真之介、彼らが愛する女性を『息もできない』(10)のキム・コッピが演じている。またYOU、向井理、高杉真宙など豪華キャストが脇を固めているのも話題。
7月7日(土)より新宿バルト9ほか全国公開。
https://kimikimikimi.jp/
Text:Takeo Matsuzaki Photo:Michika Mochizuki
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松崎健夫(まつざき・たけお)
映画評論家。『キネマ旬報』などに寄稿し、『WOWOWぷらすと』『ZIP!』『japanぐる〜ヴ』に出演中。共著『現代映画用語事典』ほか。