ふたりの監督が激白! クレイジーな山田孝之の真実
今回インタビューした山下敦弘監督と松江哲明監督は、ともに国際映画祭に縁が深いという共通点がある。山下敦弘監督は『リンダ リンダ リンダ』(05)をロッテルダム国際映画祭、『天然コケッコー』(07)をトロント国際映画祭に出品。松江哲明監督は『フラッシュバックメモリーズ 3D』(12)で全州国際映画祭NETPAC賞を受賞するなど、国際的な評価も高い。そんな二人は、山田孝之がカンヌを目指す姿をどう感じていたのか……。
松崎:
松江さんと、山下さんの出会いのキッカケを教えて下さい。
松江:
ゆうばり国際ファンタスティック映画祭で夕張行ったときに初めて会いました。山下君と一緒にやったのは『谷村美月17歳、京都着。』(07)という作品が最初ですね。でも、『ばかのハコ船』(02)に僕が出演したり、逆に僕の『呪いのビデオ』に参加してもらったりとか、二人でちょこちょこやっていました。
山下:
もう17年くらいやっていますよね。
松崎:
今回の『カンヌ映画祭』、観ている側からすると『東京都北区赤羽』との関係はなんだろう? と思ってしまうのですが。
山下:
まあ、要は“山田孝之シリーズ”ですよね。山田君がいて、そこに僕と松江君がいる。で、山田君に振り回されているという。
松江: たぶん山田君もいろんな監督と仕事をしていて「こういうことをやるときはこの人」というのがあると思うんです。だから山下君が言うところの“山田孝之シリーズ”は、ただのドキュメンタリーじゃないんですよ。『東京都北区赤羽』の時は、鬱モードの山田孝之を撮るのに山下君が困っていて。それを僕がまとめた感じでした。でも今回はアッパー系で躁状態の山田孝之がまた同じようなことを始めた。それで変なドキュメンタリーをやるときは、僕たちに声がかかるようになったという訳なんです。
松崎:
アッパーで躁状態の山田孝之さんは、どんな感じになってゆくのでしょうか?
松江:
後半を観てもらうと判ると思うのですが……山田孝之が化け物なんですよ。最前線で突進してくる。山田孝之のとんでもない映像が撮れているんですけど、「これをどうやって人に見せるのか」という問題があります。というのも、山田孝之の思考を本当に映像化すると言っても誰も理解できない(笑)。皆が知っている人物なので、こちらも判りたいと思っているのに、なぜか本人が拒絶してくるんです。山田君は「わかられてたまるか!」みたいな感じなんです。その間に立っている僕らにはジレンマがあります。これが劇映画だったら、役に当てはめて「山田孝之とはこういう人間です」と表現できる。しかし、これをドキュメンタリーでやるのは本当に難しい。『東京都北区赤羽』の時も、同じような苦悩はありましたが、『カンヌ映画祭』の方は編集がさらに難しい。自分が作った作品の中で「ドキュメンタリーってこんなにも面倒くさい」と感じたのは久々ですね。
山下:
僕は全くもって山田孝之のことがわからない(笑)。カメラマンが撮影して、松江君がまとめてみんなでひとつ次の世界観が構築されている。横で見ていてはじめて、あの人がやりたいことが判ったというか。だから視聴者も、本当か嘘か判らなくなってきているのは当然だと思うんです。
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「山田孝之のカンヌ映画祭」
2016年夏、俳優・山田孝之に呼び出された山下敦弘監督は、彼から「世界最高峰のカンヌ映画祭で賞を取りたい」と告げられる。ふたりはそのことをきっかけに、カンヌで賞を取るための映画製作を開始するのだが……。
テレビ東京・テレビ大阪ほかにて 毎週金曜日 深夜0時52分より放送中(地域によって放送日時が異なります)
http://www.tv-tokyo.co.jp/yamada_cannes/
Text: Takeo Matsuzaki
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松崎健夫(まつざき・たけお)
映画評論家。『キネマ旬報』などに寄稿し、『WOWOWぷらすと』『ZIP!』『japanぐる〜ヴ』に出演中。共著『現代映画用語事典』ほか。