シュタイナー哲学を体現したエコ建築
今回のヘアケアラインの主たるキープラントとなったオート麦は、ドイツ・シュワビシュグムンドにあるヴェレダのバイオダイナミック農園で収穫されたもの。シュワビシュグムンドにはヴェレダの社屋のなかでも最大のドイツ支社があり、ヴェレダの製品づくりの本拠地でもある。1921年に設立されたこの社屋は、ルドルフ・シュタイナーの哲学に基づき、自然と共存するかのように環境に配慮して設計された、世界有数のエコ建築としても知られている。たとえば、館内には冷房設備が一切ない。外気を取り込む装置を作り、水温18℃の地下水と外気との温度差から生まれる冷たい空気が、館内を冷却するという仕組み。エントランスの奥にある大きな滝は、心地よいマイナスイオンを発生させるのみならず、冷却された空気を分散する働きをする。また、建物の屋上を緑化することで、敷地内に美しい景観をつくるとともに植物の蒸発散機能による冷却効果をもたらしている。製造工場部門に、ビジターが必ず訪れる場所がある。それは、地下2階から地上4階まで続くらせん状の階段。ここに、人智学画家・ロゲンカンプによる、ヴェレダの植物観の象徴ともいうべき壁画がある。高さ22メートル、壁面220平方メートルにわたって描かれた壁画は、根や土の様相から始まり、上方にいくにつれ光の影響を受けて花や発芽の様子を表現した、壮大な作品。
photo : Midori Yamashita