あなたも意識すべき"agender(エイジェンダー)" が世界を動かす
ランウェイに登場した刈上げヘアのモデルが話題をさらった2016SSシーズン。彼女たちが象徴するのは、"agender(エイジェンダー)"という男女の性差にとらわれず「個」を尊重する新しい価値観だ。ファッション界にも波及するその潮流を、「ユナイテッドアローズ」上級顧問の栗野宏文さん、「NARS」インターナショナル リード メーキャップスタイリストの伊藤貞文さんとともに紐解く。
メゾンを動かす! ヤングセレブ、モデル発の潮流
「このような"エイジェンダー"の考え方が広がった背景には、若者たちの意識変化がある。大切なのは『男』性でも『女』性でもなく『個』性。そして"ジェンダーは自分で選ぶもの"」と栗野さん。NARSの伊藤さんは"エイジェンダー"世代を象徴する存在として、モデルやセレブの言動を指摘する。「モデルのルース・ベルもそうですが、彼らはとても自然体。リリー・ローズ・デップも、好きになる性別が定まらない"セクシャルフルイディティ"について語り、話題になりました。ウィル・スミスの息子のジェイデン・スミスは、ファッションアイテムとしてスカートを常用し、今季の『ルイ・ヴィトン』のウィメンズの広告にもスカート姿で登場しました。彼らにとっては、男性や女性、レズビアンやゲイといった性別の枠にとらわれないことはごく当たり前。そういう時代を若者が作っていて、デザイナーたちにも影響を与えているんだと思います」。
「"エイジェンダー"は、いまもっとも面白いユースカルチャーの現象であることは間違いない。『その人らしさがかっこいい』という原点にカムバックし、『個』を尊重することで今のトレンドが生まれています」(栗野さん)。そして「個」を尊重する流れはバックステージにも波及。「今までショーのモデルのヘアメイクは統一することが基本でしたが、あえてバラバラのメイクを要請するメゾンが増えてきました。モデルの個性を活かそう、という多様な時代の流れを感じます」(伊藤さん)。ユースカルチャー発のリアルな感覚がメゾンを動かす、そしてその流れがファッションとなって返ってくる。そんな時代が到来している。
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栗野宏文さん
Hirofumi Kurino/「ユナイテッドアローズ」 上級顧問
「ユナイテッドアローズ」にてバイイングやブランドディレクションに携わり研鑚を積み、現在は上級顧問・クリエイティブディレクションを担当。ファッションや文化を読み解くジャーナリストとしての一面もあり数々の媒体で取材・寄稿も行う。日本のファッションカルチャーを担うひとりである。
http://www.united-arrows.co.jp -
伊藤 貞文さん
Sada Ito/NARS インターナショナル リード メーキャップスタイリスト
2001年ニューヨークから帰国後、NARS日本1号店のカウンターでメーキャップスタイリストのキャリアをスタートさせ、10年NARS インターナショナル リード メーキャップスタイリストに就任。各国のファッションウィークや、「エル」を始めとするモード誌、セレブリティのメイクアップ、広告、TV、MVなどで多方面で活躍。第一線の現場で培ったセンスを生かし、繊細なテクニックと感性で独自の世界観を創り出し続けている。
http://www.narsjapan.com/
text : Naho Sasaki