【vol.3】大統領の消された妹:アメリカのファッション史を築いたケネディ家の女たちの光と影
ジャクリーン・ケネディ・オナシス、その妹のリー・ラジウィル、キャロリン・ベセット・ケネディ。ファッション・アイコンとして現在も影響を与えているケネディ家の女性たち。でもその陰で人知れず存在を葬られた長女がいた……。華麗なる一族に隠された悲劇の長女、ローズマリーの人生が最新の資料に基づき1冊の本「ROSEMARY The Hidden Kennedy Daughter」として出版されたばかりの今、ケネディ家の女性たちのパワーを振りかえれば、その分だけ強かった影の部分も見えてくるはず。第3回となる本日は33歳の若さで亡くなった悲劇のヒロイン、キャロリンをフィーチャー。
完璧な90年代ファッションアイコンに変身。ショップ店員から現代のシンデレラが誕生
自分は彼の母親、ジャクリーンのような振る舞いができるだろうか……。そのプレッシャーは普通の中産階級に生まれた女性にとっては重すぎたものの、結局彼女は承諾し、マスコミを徹底的に退けての結婚式の準備に臨む。ドレス選びは迷いに迷ったが、式の2か月前、過去に「カルバン・クライン」のデザイナーをつとめたことがあり、当時「セルッティ」のデザイナーをしていたナルシソ・ロドリゲスに決める。
フィッティングには毎回3時間が費やされた。靴はお気に入りの「マノロ・ブラニク」。1996年9月21日、マスコミを徹底的に遠ざけ、参列者には機密保持契約を結ばせての結婚式が行われたが、美しい花嫁花婿のアイコニックな写真が流出。世紀の結婚に報道はますます過熱した。「WWD」紙の編集長、パトリック・マッカーシーはキャロリンを「ジャクリーンの正式な後継者たるモダン・スタイル・アイコン」と評し、『ヴォーグ』のアナ・ウィンター、『ハーパーズ バザー』のリズ・ティルベリス双方から表紙インタビューのオファーが来た。ラルフ・ローレンはキャロリンをミューズにしようと手を尽くした。普通の女性なら飛びつくような夢のような話だが、キャロリンの許容範囲はとっくに振り切れていた。
キャロリンは幾多のオファーを断り、ごく限られた社交イベントにしか出席しなかった。それでも、エフォートレスでミニマリスティックなドレスアップ、シンプルなヘアメイク、そして何より豪華な夫との写真は大衆を魅了するのに十分だった。しかし挙式からわずか3年の1999年には、2人の結婚生活は破綻寸前になる。
Photo:GETTY IMAGES Text:Ryoko Tsukada
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(参考文献)
ローレンス・リーマー「ケネディ家の女たち」
Edward Klien 「Just Jackie : Her Private Years」
ネリー・ブライ「ケネディ家の悪夢 セックスとスキャンダルにまみれた3世代の男たち」
クリント・ヒル「ミセス・ケネディ 私だけが知る大統領夫人の素顔」