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90年代を席巻した “ニュー・スクール”を代表するグループ。左からデ・ラ・ソウル、ア・トライブ・コールド・クエスト。

Photo: FilmMagic, GETTY IMAGES

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「あ、マッチョじゃなくていいんだ~」日本人ラッパーがホッとした90年代

― 2013年秋冬のランウェイには、'90sヒップホップを彷彿とさせるルックが数多く見られます。90年代と80年代で、ヒップホップのファッションはどう変化したのでしょう?

 
80年代は金ジャラ(編集部注:太いゴールドネックレスの重ね付け)、ファー、レザーの上下。“装われたゴージャス感”というか、成金感覚があります。90年代はもっとシンプルで質素なんですよ。ワーク、ミリタリー、プレッピー。スポーツ要素はもちろんですが。
  
― シンプルな'90sスタイルへ移行した背景は?
 
80年代末、それまでのマッチョで、ギンギラで、成金で、暴力的で、というポジションじゃない、知的でおたくよりな“ニュー・スクール”という流れがきて。「馬鹿みたいなことにお金を使うのがカッコ悪い」という雰囲気になったんです。デ・ラ・ソウルやア・トライブ・コールド・クエストなど、特にニューヨークで活動していたグループからのトレンド。あと、キレイめのボタンダウンシャツとかアイビーっぽいスタイルを、黒人のイケてる子が取り入れるっていうオシャレ感もその頃からありましたよね。デフ・ジャム・レコード創始者、ラッセル・シモンズが90年代に始めた「ファットファーム」なんかモロにそんな感じでしたし。一方でL.A.のファッションは、ビースティ・ボーイズ、サイプレスヒルのような、もっとワークっぽい感じ。
  
あと90年代初頭は、金ジャラに代わってアフリカの革製ペンダントをぶら下げる、というスタイルもあって。これは“アフロセントリック”という「ちゃんとアフリカ系として意識を高めていこうよ!」という流れ。
 
とはいえ、90年代のヒップホップだって、99%はダサい人たちだったんですけど。ニューヨークとL.A.のごく一部の人がおしゃれだっただけで!
 
― 当時、日本のヒップホップファッションは?
 
90年代の“ニュー・スクール”は、日本人が取り入れやすかった。「あ、マッチョじゃなくていいんだ~」と。80年代の“金ジャラ”は、財産が大事という黒人の文化に根差したものだから。日本人がやると……コスプレということになる。まあ、アメリカのラッパーも身に着けているものはフェイクだからコスプレなんですけど。
   
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「カルチャー考からイバりアイテムまで。急上昇トレンド“90年代ヒップホップ”を徹底マスター」トップへ
  • PROFILE/宇多丸

    ヒップホップ・グループ「ライムスター」のラッパー。日本にヒップホップというカルチャーが定着していなかった80年代後期にラップをはじめ、1989年にマミーDとライムスターを結成。ライブ活動を中心に支持を集め、1993年にインディーズ・デビュー。2001年のメジャー移籍など、着実にキャリアを積み重ねて2007年3月には日本武道館での単独ライブで大成功を収めるも、これを最後に一旦グループ活動を休止した。2009年10月に活動を再開し、ここからさらに毎年リリースするアルバムのすべてがTOP10ヒットとなるなど快進撃を続ける。近作は2013年1月の9thアルバム『ダーティーサイエンス』。
    最近ではラジオ・パーソナリティ、文筆家としても活躍。幅広い知識に裏打ちされたエンターテイメント性に富む語り口で人気を博す。レギュラー番組にTBSラジオ「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」、TOKYO MXテレビ「5時に夢中!サタデー」など。2009年「ギャラクシー賞」DJパーソナリティ部門を受賞。
    http://www.rhymester.jp

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