ゲスが極まるフランス名作不倫小説オリンピック
エディターが私的に夢中になっているものなどをリアルな目線でお伝えする、デイリー連載のOKINI! 今回は、ファッションフィーチャーエディターKEIICHIがゲス不倫キャラクターをご紹介。不倫小説の玉手箱、仏文学のゲス男キャラベスト3とは?
【銀メダリスト】ジュリアン・ソレル @スタンダール作『赤と黒』
主人公のカス男はまたしてもジュリアン。ジュリアンと言う名前は不倫に導く呪いでも備えているのでしょうか。貧しいけれど頭と外見にいいモノをもっている出世欲男、ジュリアン。この人自身は結婚はしないのですが、人妻を利用し、若い女性を翻弄し、婚約中(現代の感覚にしたら結婚に近いかも?)にやらかします。あらすじはこちら。
★約10秒でわかるあらすじ
出世のため町の有力者の奥さんをたぶらかす → 旦那にバレかける → 奥さん、ジュリアンを神学校に推薦して不倫をなかったことに → パトロネスと被保護者の関係に移行 → ジュリアンは頭も見た目もいいので、あっという間に神学校で出世 → 貴族一家に召し抱えられる → その家の娘とラブラブ結婚のお約束 → お育ちが悪いので娘のパパは猛反対 → パパ、妥協策として「ならば経歴を書き換えてしまおう」とパトロネスの元不倫奥様に詳細確認 → 奥さん不倫を深く後悔中 → よりにもよって「不倫許すべし」と血眼になっている司祭に相談 → 司祭にそそのかされ奥さん、今カノのパパに「その男、ゲス男です! 気を付けて!」と手紙 → 結婚話はおじゃん → 逆切れジュリアン、奥さん射殺計画実行 → タイーホ → 死刑にだけはなるまいと今カノ使って裁判で闘争
でも、ジュリアンのカス男ポテンシャルが本格的に発揮されるのはこの後……。
大人しく抗って懲役刑でも勝ち取っておけばいいものを、元不倫相手の奥さんが書いた手紙が奥さんの本心じゃなかったことを知ると、「俺の事愛してくれていたんだね」と勝手にポジティブに受け取り、自分から死刑台へ。
えっと、余計なことやめてもらっていいですかね。そんなことしたら奥さん、一生罪の意識に苛まれること必至。罪を償うフリして、「俺って潔いイイ男」と自己演出。からの、「そんな俺を死に追いやった年増女なぞ一生苦しむべし」という呪いを援助してくれた女性にかけるカスっぷり。現代ならスプリングセンテンスさんが飛びついてくれることでしょう。カスの極みアワードがあったら、絶対に最高賞を獲得できるはずですが、フランス文学はトップのゲス不倫たちが結集したオリンピックとも言える場。金メダリストは、ある意味超越しています。
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エディターKEIICHI : ファッションフィーチャー担当。不倫ドラマ『アフェア 情事の行方』を一通りチェック。結局、不倫はモラルの問題なんかではなく、法律の悪用だから非難されるのねと教えてくれるこの作品では、今流行りの“W不倫”がドロッドロに描かれていてむしろ爽快。登場人物たち全員の面倒臭さを楽しむドラマです!
『アフェア 情事の行方』公式サイト/http://affair.jp/