エディターズPICK 2016/8/29(月)

プラントハンター・西畠清順さんによる「ウルトラ植物博覧会2016」の舞台裏を公開

世界中を飛びまわり、年間240トン以上の植物を仕入れるという話題のプラントハンター・西畠清順さんの植物博覧会が、東京・銀座にあるポーラミュージアムアネックスにて開催中。2回目となる今回は、会場構成をSIMPLICITY代表・緒方慎一郎さん、うつわを陶芸家・内田鋼一さんが担当。西畠さんによるナビゲートで、本展の見どころと舞台裏をリポート!

右が西畠さん。左は熱帯雨林でしか育たないコウモリランの一種。インドネシアの特殊な場所で現地のプラントハンターに採取してもらった特別なもの。普通のコウモリランと違って、日本の寒さにも耐える特別な品種で、着生植物で本来はほかの木に寄生して生息するが、今回は内田さんの陶板と合わせてアートな雰囲気に。

「昨年初めてこの展覧会をやって、すごくいいエネルギーを感じたんです。ただ植物を見るために、こんなにもたくさんの人が来てくれるんだ!って。だから初めての方も昨年来てくれた方にも、もっと喜んでもらいたくて……」。そんな西畠さんの思いが結晶した今年の「ウルトラ植物博覧会2016」。もともと親交のあった陶芸家・内田鋼一さんと、今回の展示で縁をつないだデザイナーの緒方慎一郎さんに協力をあおぎ、ますますパワーアップしているとあって、連日来場者が絶えない。

ワイルドでエネルギッシュなパワーを放つ稀少な植物たちが、力強さと繊細さを兼ね備えた内田さんのうつわと、そぎ落とされ凛とした空気を放つ緒方さんの空間と出合い、これまでにない独特の世界観を生み出している。

そもそも植物はいつどこからやってきたのか……。なんと4億年以上前に川から陸上に上がってきたのが起源なのだそう。そして初めて巨大化に成功したのが、シダ植物の仲間であるこのソフトツリーファーン。特別な許可を得て今回輸入された。

西畠さんが集めるマニアックで“ウルトラ”な植物たちは、その見た目の驚きもさることながら、それぞれが持つストーリーも魅力のひとつ。会場入り口に置かれているパンフレットには、植物ひとつひとつについての西畠さんの解説が記されている。展示された植物は、純粋にその造形を楽しめるのはもちろん、シンプルな見た目とは裏腹にあっと驚くトリビアを隠し持ったものも。

通称“涼雲”と呼ばれるサボテンの一種。中央の真っ赤な花座が目を引く。

こちらは、アゴニス フレクシオーサ“ナナ”。植物はもちろん、プランターとなっているうつわにもご注目。大きな植物とうつわがこんなにも華奢な高台で支えられていることに驚く(※この植物の展示は終了につき、現在はこの鉢に別の植物が入っている)。

植物に加えて注目したいのが、パワフルな植物を受け止める内田さんのうつわ。内田さんのうつわに入ると、元気でエネルギッシュで土っぽい印象の植物たちが途端に大人っぽい佇まいに。「安定感のあるうつわに安定感のある植物を合わせるのではなく、あえて高台を小さくして微妙な緊張感と浮遊感を出してみました。長い根やそれを満たす土も入っているはずなのに、この中はどうなっているんだろう?なんて、観たあとにも余韻が残るような、そんな非日常的で不思議なバランスを楽しんでもらえたらいいなと思っています」と内田さん。

内田さんのうつわが浮遊感のあるイメージなので、それに合わせて小さな鉢をリズミカルにハンギングしている。壁面には、そら植物園がこれまで手がけたプロジェクトの一部を年表で紹介。

会場は、入り口から細い路地を進んでいくと、正面にカウリの木が出迎えてくれる。路地を抜けると4つのスペースが広がり、それぞれの空間を通って最後にメインのバオバブの木へ辿り着く構成。

「迫力もボリュームもある植物を限られた空間のなかで配置するため、あえて外側に細い道を作り奥行や緩急を付けました。離れて見たときに手前と奥にある植物同士が重なって見えても美しいレイアウトにしています。蚊帳を使って透ける仕組みにすることで、透けて見たときと直接見たときとのギャップが味わえたり、空間構成からもワクワクしてもらえるよう意図しました」と緒方さん。

今回の展覧会でメインとなっているバオバブの木を囲む緒方さん(左)、内田さん(奥)、西畠さん(右)。80kg以上もあるこの木を西畠さんはセネガルから手持ちで運んだのだそう。

会場の外周は黒い蚊帳、中にあるバオバブの木は白い蚊帳で囲んで、神聖でピュアなイメージに仕上げたという緒方さんの思惑通り、この空間に足を踏み入れた瞬間、異空間に迷い込んだような神々しさに圧倒される。砂から立ち上がっているような神秘的なさまは、まるで根が地下から水を吸い上げているかのよう。

一番大きなうつわには、チチイチョウの木を。「どのうつわもすごくいいけど、これは見ていてスカッとします!」(西畠さん)「うつわの高さがあるので、低くてどっしりした植物が入るのかなと想定していたけれど、予想外に高い木が入っていて驚きました」(内田さん)。

会場の一角には西畠さん直筆のメッセージが。気になった植物は何度でも戻って見てもらいたいという思いが込められている。

西畠さんに会場の感想を訊ねると、「“場”の持つ力って大きいですよね。1本の杉でも杉林の中にあったら1本の杉だけど、美しい都会の真ん中、整えられた場所に置くと特別な見え方になる。緒方さんの空間には無駄がなくて、植物がすごく映えるんです。仕事で植物を届ける際に、いいうつわに入っていい空間に置かれるのを見ると、「植物屋冥利に尽きるな〜」と思っていて。植物たちもいいうつわや場所と出合うことが大事。そうした意味でも今回は、前回よりももっとひとつひとつの植物が際立って、よりフォーカスされているんじゃないかなと思います」。

西畠さんファンはもちろん、うつわやアート好きもわくわくできる今回の「ウルトラ植物博覧会2016」。植物が持つ未知なるエネルギーをぜひ体感してみて。会期は9 月 25 日(日)まで。

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ウルトラ植物博覧会2016 西畠清順と愉快な植物たち
会期:開催中~2016年9月25日(日)まで
会期中無休
開館時間:11:00~20:00(入場は閉館の30分前まで)
入場料:無料
会場:ポーラ ミュージアム アネックス
中央区銀座1-7-7 ポーラ銀座ビル3階
http://www.po-holdings.co.jp/m-annex/

緒方さんが手掛けた、会場の下にある2階の和菓子店「HIGASHIYA GINZA」では、内田さんのうつわに入った植物を個数限定で販売中。普段手に入れることができない貴重なミニ植物が期間限定で購入できる。

  • 西畠 清順(にしはた せいじゅん)
    1980年生まれ。幕末より150年続く花と植木の卸問屋、花宇の五代目。日本全国・世界数十カ国を旅し、収集している植物は数千種類。日々集める植物素材で、国内はもとより 海外からの依頼も含め年間2,000件を超える案件に応えている。2012 年、ひとの心に植物を植える活動“そら植物園”をスタートさせ、植物を用いてさまざまなプロジェクトを多数の企業・団体などと各地で展開、反響を呼んでいる。

    内田 鋼一
    陶芸家。1969 年愛知県名古屋市生まれ。東南アジア、中東、西アフリカなどの各地を旅し、現地でやきもの作りに参加。その後、四日市市の製陶工場で植木鉢や土鍋作りを体験し、独立、築窯。 日々の食卓で活躍するプレーンなうつわから、巨大な陶壁や大壺まで多彩なやきものの世界を繰り広げる。その活躍は日本にとどまらず、ヨーロッパ各地やアジアでの展示で高い評価を受けている。

    緒方 慎一郎
    SIMPLICITY代表、デザイナー。1998年SIMPLICITY設立。“現代における日本の文化創造”をコンセプトに、和食料理店「八雲茶寮」「HIGASHI-YAMA Tokyo」、和菓子店「HIGASHIYA」、プロダクトブランド「Sゝゝ[エス]」等を展開。 自社ブランドのみならず、建築、インテリア、プロダクト、グラフィックなど多岐にわたるデザインやディレクションを行う。著書に『HIGASHIYA』(青幻舎刊)、『喰譜』(東京大学出版会刊)。

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