選者/山縣みどりさん(映画ライター)
『ブエノスアイレス恋愛事情』
ブエノスアイレスに生きる不器用な男女の恋模様が描かれる。と言うと、単純なロマンティックコメディのようだけど、主人公のマルティンとマリアーナは現代病である“●●恐怖症”を抱えている設定。だから真っ当な人間関係どころか恋愛関係も築けず、それに落ち込みながらも自分を変えようともがく姿が我がことのようで共感しまくり。大都市の混沌と主人公の心模様をシンクロさせる映像や、わざとらしくない展開は技アリ。監督は日本オタクらしく、マルティンの自宅にフィギュアや奈良美智のカードなどがあふれてるのも可愛い。
DVDで観返したい旧作はコレ!
『ハンナとその姉妹』(1986年)
実はドロドロな男女関係にある三姉妹とそのパートナーたちの不適切な関係を軽妙に描く、ウディ・アレンの毒っ気がおかしい名作。家族が集まる感謝祭が背景となっているにも関わらず、「こんな家族、マジでいらないかも」と思わせる辛辣さ。でも最終的には人情話っぽく落とし込んでくれるから観た後の爽快感たるや。アレンの人間観察力に脱帽するとともに、撮影当時、映画同様のパートナー関係にあった彼とハンナ役のミア・ファローのその後に思いを馳せながら見ると、またひと味違った楽しみ方ができますな。現実は映画より奇なり?
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『ブエノスアイレス恋愛事情』
監督/グスタボ・タレット
出演/ハビエル・ドロラス、ピラール・ロペス・デ・アジャラ
配給/Action Inc.
公式サイト/http://www.action-peli.com/medianeras/
2013年11月16日(土)~、新宿K'sシネマほか全国順次ロードショー