特集 2016/10/1(土)

女性はなぜ仕事で失敗をおそれるのか?

失敗は誰でも嫌なもの。では、女性は男性に比べて、失敗をより深刻に捉えがち、ということは知ってた? 最近の調査で明らかになった失敗への対処法に関する性差の問題を『ウォール・ストリート・ジャーナル』誌などに寄稿する女性ライター、クレア・グローデンが自身の経験も交えながら考察。

ー女性たちは失敗を恐れるあまり、やってみることすらしなくなる。
 
これら全ては学校にいる限りは大した問題にはならない。女子生徒は大学を卒業するまでは一貫して男子生徒よりも出来が良く、より良い成績を収め、沢山の人数が大学に進学する。しかし、女性が労働の世界に入っていくと、この完璧主義が彼女たちの社会的地位を脅かすのだ。男性がその職業に就くために必要な能力の60%しか達成していないと自分で感じていても、その職に志願する一方、女性は自分の能力が100%に達していると思わない限り、志願することはない。ある調査によると、女性が仕事を志願しない2番目に大きな理由は、失敗するような地位に自分を置きたくないからだ。
 
予想される失敗への恐れ、というのが競争的だったり難しいタスクに対して、撤退が許されている場合、女性は男性よりも参加したがらないという科学的な実証を説明するひとつの要素だろう。自分自身を試す機会を熱心に探すよりも、大部分の女性は自分の居心地のいい場所に碇を下ろす傾向がある。研究者たちはそれは彼女たちが、自分が成功できると信じていないからだという。これはまさに、自己増強的なメカニズムだ。女性が競争が始まる前から撤退した場合、結局、順位法を支配するのは男性になる。
 
2007年に行われ、現在ではすでに有名になった研究を紹介しよう。スタンフォード大学で経済学の教授を務めるミュリエル・ニーダールとピッツバーグ大学のリース・ヴェスタールントは男性2人、女性2人で構成される複数のグループに簡単な足し算の問題をさせた。1回目では参加者は正しい答えに50セントずつ与えられた。2回目は彼らはグループ内の最高スコア取得者は正しい質問につき2ドルを与えられる一方、他の参加者は何ももらえない、というトーナメント式が採用された。その後、参加者はどちらの方法かを選ぶことを求められる。すると男性のほぼ4分の3が、トーナメント方式を選んだ一方で、同じ方式を選んだ女性は35%にとどまった。どちらの方法でも能力に男女の格差はなかったにもかかわらずだ。
 
この男女の格差は単純に好みの違いだということもできるだろう。「男性はより競争を好む傾向があります」とヴェスタールントはインタビューで答えている。「女性と男性に交渉についてどう捉えているか説明するようにと尋ねた場合、男性と女性では交渉の捉え方が全く違なります。男性は交渉ごとをボールゲームをするのを同じようにとらえがちですが、女性はそれを歯医者に行くのと同じようなものだと捉えているのです」。しかし、一方で自信のある無しも重要な役割を果たすという。女性の方が自信がない、というわけではない。むしろ、男性がびっくりするほどに自信過剰であるということがその研究では示された。男性の4分の3は、自分が4人のグループ内でベストだと予想したのに対して、女性は43%にとどまった。女性は自分が勝てる見込みだと考えた場合、男性よりも競争に前向きとなる。
 
―そしてさらに不利な条件が存在する

失敗への嫌悪というのは女性の頭のなかにだけ存在するのではない。多くの場合、仕事の現場で女性の失敗は男性よりもより厳しくジャッジされている。イエール大学の社会心理学者であるビクトリア・ブレスコールは「その人の性と合致しない」分野にいる人間は、何か間違いを犯した場合、その人の指導者は彼(彼女)を有能ではないと捉える傾向があるという。(この発見は両方の性に当てはまる。例えば男性の看護師も失敗に対してより多くの非難を受けうる、ということだ)すでにジェンダーのステレオタイプに対して骨の折れる戦いをしている女性に取って、失敗は実に高く付くものなのだ。
 
幸運なことに、これらの事実が徐々に知られるようになってきたことで、女性の挑戦に対する態度が変わる可能性がある。最初の失敗にめげずに頑張り通せば、より大きな成功を得られるはずだ。私にとって、Dの評価は私のジャーナリズムへの挑戦を終わらせるものではなかった。そして、大学でその後起きた幸運な出来事の連続によって、そうならずに済んだ。もちろんその後も悪い成績や不可はたくさんもらった。生産的に失敗と付き合う方法を学ぶことが、より多くの失敗をしないための最良の方法であり、私は今もそれを学んでいる最中だ。

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Translation & Text: Naoko Ogata Photo:Getty Images

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