特集 2016/10/1(土)

女性はなぜ仕事で失敗をおそれるのか?

失敗は誰でも嫌なもの。では、女性は男性に比べて、失敗をより深刻に捉えがち、ということは知ってた? 最近の調査で明らかになった失敗への対処法に関する性差の問題を『ウォール・ストリート・ジャーナル』誌などに寄稿する女性ライター、クレア・グローデンが自身の経験も交えながら考察。

高校一年生のとき、私は人生で初めての落第点をとった。それはジャーナリズムのクラスを受講して2週間目の事だった。最初に出された課題のひとつがオハイオ州にある私たちの町で、地元の企業に広告を売る、というものだったのだが、すぐにそれは私にとって無理難題だと判明した。すごく恥ずかしがり屋だったし、運転免許も持っていなかった私は、セールスの集計になったとき、手ぶらでクラスに行く羽目になった。私の机の上にDの評価が置かれた翌日、私はその授業をドロップアウトした。その課題が全体の評価で見れば大したことのない、ほんの些細なものであり、また、私のジャーナリスティックな側面を評価するものでもなかったにも関わらず、だ。私にとってはライターとしての自分の将来性を守るためには、あらゆる失敗の可能性を避けるのが唯一の方法であると思えたのだ。
 
期せずして、私は15歳で、不幸ながらますます事実であると実証されつつある事実、すなわち「女性は否定的なフィードバックにより反応しやすく、失敗から立ち直ろうと苦しむ」ということを自ら証明した。女性は男性よりも、目標を高く掲げるだけでなく、失敗を個人的な問題として捉える傾向がある。そして自信の足りなさと、女性の能力に関する否定的なステレオタイプがますます女性の成功を妨げる。

―女性は目標を高く掲げがちで、すぐに思いとどまってしまう
 
ハーバード大学経済学部の教授であるクラウディア・ゴールディンは、経済を専攻する男性の数が女性の三倍にもなる理由を突き止めようとしたことがある。すると、経済序論のクラスでA以下だった女性は、同じ条件の男子学生に比べて、圧倒的多数がのちに専攻を変えていたことが判明した。彼女の分析によると、Bの評価を受けた女子学生で専攻を変えないのは、Aの評価を受けた女性学生の半分程度にとどまったという。一方でBの評価を受けた男子生徒はAの評価を受けた男子生徒と同じ割合で経済を専攻していた。ゴールディンは「女性は最初のコースでとても上手くいかない限り、その分野を専攻しつづけない傾向があります」とインタビューで答えている。別の研究では、フィードバックの処理方法が男性と女性で異なるという結果が出ている。特に上昇志向のある女性は同じような男性と比べて、肯定的なフィードバックをもらった場合、そこから得られる自信が少ないという。そして、否定的なフィードバックからはより強い感情のダメージを受けているという。
 
理系科目を専攻している女子学生は同級生の男子学生よりも目標を高く掲げるというデータもある。スタンフォード大学の社会学の教授シェリー・コレルによると、男性の方が生来的に優れているとされる能力について、自分が試されていると感じた場合(彼女の研究では、男性の方が優れているとされる”コントラスト感度”スキルというのをでっち上げた)、女性たちは成功するためには89点以上を取らなくてはいけない、と信じていたそうだ。一方の男性は、79点以上で満足していた。(テストは100点満点で、”コントラスト感度”を図るためを装った20の質問で構成されていた)女性は自分たちのジェンダーについて否定的なステレオタイプに気がついたとき、失敗をより恐れるようになってしまい、皮肉にもそのステレオタイプが正しいことを証明してしまう。

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Translation & Text: Naoko Ogata Photo:Getty Images

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