ウェブサイトやブログ、SNSなど、あらゆるインターネットメディアを駆使して注目のファッションやビューティ、カルチャーの情報を発信し、多くのファンから支持を集めているまつゆう*さん。インターネットとの出会いは、ハタチの頃に遡る。
　
「15歳からモデルとして活動していたのですが、どちらかというとクリエイターに憧れていて、自分で撮った写真と友人が描いたイラストをコラージュして作品をつくったり、エッセイを書いたりしていました。そういったものを発表する場として、今でいうZINEのようなものを作ろうと思って調べてみたら、費用が高くてお金が追いつかないことがわかったんです。そんな悩みを知り合いのヘア＆メイクさんに打ち明けたところ、『ホームページって知ってる？』と」
　
当時はウィンドウズ98が発売になり、ジオシティーズやインフォシークなど無料でホームページを作れるWEBサービスを利用して個人サイトを立ち上げる人が現れ始めた頃。まつゆう*さんはそんなデジタルの世界とは無縁だったが、「ホームページを作れば世界中の人が見にきてくれる」という話に衝撃を受け、さっそくパソコンを購入。独学でHTMLを学び、1998年にマガジンスタイルのホームページ「chelucy（チェルシー）」を立ち上げた。
　
「モデルとしての私ではなく、純粋に発信する内容に注目してほしかったので、本名の松丸祐子ではなく『まつゆう*』としてスタート。インターネットで発信する面白さや、ユーザーの人たちと交流する楽しさにすぐにハマっていきました」
　
その後、2001年には友人のエンジニアらとともに、モブログサービス「ヤプース」を始動。モブログとは携帯電話（ガラケー）から更新できるフォト日記サービスで、まつゆう*さん自身も「matsu-you’s eye!!」という、お気に入りのものやおすすめのアイテムを紹介するモブログをスタートしたところ、大ブレイク。掲載した商品が完売するなど、多大な影響力を持つようになる。
　
「自分が気に入ったものは秘密にしておきたいという人もいるけれど、私は逆にみんなに薦めたいタイプ。薦めた相手が喜んでくれるのが、本当に嬉しいんです。インターネットを使ってそれができるなら、どんどんやっていきたい！と思いました」
　
同時に「ヤプース」のサービス自体も人気が上昇し、利用者が13万人まで増加。もともと小規模で運営していたため、サーバの容量など物理的な面で立ち行かなくなり、2004年、「ヤプース」をGMOインターネットグループに譲渡した。すると今度は同社から「ヤプースのようなブログを作りたい」との依頼を受け、翌年、ブログサービス「ヤプログ！」のプロデューサーに就任することに。
2005年といえば、「ブログ」が流行語大賞を受賞した年。「ブログの女王」と呼ばれたタレントの眞鍋かをりさんを始め、当時はテキストの面白さでアピールするものが主流だったが、敢えて「matsu-you’s eye!!」と同じく、写真と短いコメントというスタイルにこだわった。
　
「もともとポラロイドのようなスクエアな写真が好きで、ホームページを始めた頃も、よくポラを撮ってはスキャンしてパソコンからアップしていました。ただ、それだと更新するのに手間も時間もかかるんです。もっと手軽にできたらいいのに……と思っていたら、2000年くらいにスクエアな写真を撮れる携帯電話が登場して。これなら自分が可愛いと感じたものをポラを撮る感覚で携帯のカメラで写真を撮って、携帯から直接どんどんアップすれば、お気に入りをみつけた瞬間にみんなに見てもらえるなと。デジタル技術の発展でリアルタイム性とインスタント感が格段にアップしたことで、より情報を発信しやすくなりましたし、それに対する反響も加速度的に増えていきましたね」