特集
2017/02/25(土)

【完全版】前田敦子、ハリー杉山が参戦! 2017年オスカー大予想スペシャル

今年は日本時間2月27日(月)に開催される、米アカデミー賞。4日間に渡って動画でお届けしてきた「ELLE CINEMA CHAT オスカー大予想スペシャル2017」の完全版をテキストで公開。芸能界随一の映画通である前田敦子さんとハリー杉山さんが発する映画愛溢れるコメントを、余すことなくノーカット版でお届けします。

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オスカーにめっぽう強い“実話もの”がどう評価されるか

よしひろまさみち(以下、Y) ただ、オスカーの作品賞において強いジャンルは何かといえば、実話なんです。
 
前田敦子(以下、A) あぁ、そうですよね。
 
Y 実話ものでいくと、このなかでは『Hidden Figures』『LION/ライオン ~25年目のただいま~』『Hacksaw Ridgeg』がそうですね。この3つもなかなか手強いのですが、このなかでもいちばん力があるのが『Hidden Figures』。日本では公開が決まっていないので、観ている方、少ないと思います。内容としては、ひと昔前、白人全盛期のNASAで実は名もなき科学者である黒人女性たちが活躍していたというストーリーです。当然、「白すぎるオスカー」問題はクリアしていますし、おまけにすごくわかりやすいエンタテイメント。アメリカ人の大好きな、いい話で、興行的に当たっています。現在も大ヒット中なので、この作品の動向は見逃せないんじゃないかな。ただ、私的に推したいのは『ムーンライト』です。前田さんも気に入ってくれているそうで……。
 
A 黒人社会の映画って、作品的にヘビーなものが多いですけど、こんなにほっこりするような話があるんだなと引き込まれました。
 
Y 3つの時代を跨いで描いているので、長めの作品ではあるんですが、見やすいよう、工夫されているんですね。少年時代、青年時代、大人時代と色味をちょっとずつ、変えていて、いつの時代なのかっていうのが二回目、観ると、よくわかりますよ。
 
ハリー杉山(以下、H) このお話って、表面的に観たら、ドラッグディーラーが出てきたり、男の子が学校でひどいいじめに遭ったりして、ダークな話に見えがち。でも、一人の男の子が大人の階段をちょっとずつ上っていき、自分のアイデンティティを見つけ出そうとする、ものすごく身近な話でもあるんですよね。
 
Y そうなんです。ただ、オスカーはゲイものには厳しい。『ブロークバック・マウンテン』でさえ、作品賞を逃しているんです。本命と言われていたのに、主要賞はアン・リ―の監督賞だけ。時代が進んだとはいえ、反ゲイの人たちは少なくありませんので、取れるかどうかは微妙ですね。
 
H いや、これで新しい扉が開かれるかもしれないですよ!
 
Y あと、象徴的な話ではあるんですが、お二人はいわゆるSVOD、定額制動画配信サービスは利用されてますか。『最後の追跡』はNETFLIXの作品でもう配信されているんです。それから『マンチェスター~』はAmazonが作りました。これまでは皆さんもご存知の大きなスタジオの作品が作品賞に入ってきていたんですが、そこにもう配信会社の作品が食い込んでくるような時代になったんですね。今年からですが、「変わったな」って感じがしました。
 
A いま、ドラマなども配信多いですよね。

 
Y Huluはアメリカの人気局HBOを中心にドラマに強く、NETFLIXは映画が作れるほどの予算をかけたオリジナル作品が強み。それぞれ個性があるんです。ちなみに『最後の追跡』は日本では劇場公開の予定はなく配信のみです。といっても、この時期、配信で観られるのは強みですよね。
 
A 日本人としてはノミネーションされている作品はいつも、公開前のことが多く、なかなか一緒に応援するテンションにまでいけなくて、さびしい思いをしたりしますよね。
 
Y アカデミー賞候補作は、前年12月までにロサンゼルス郡内の映画館で1週間以上の興行をしていることが条件なので、実はアメリカでも全国公開してないものもある。
 
A こんな風にいつでもどこでも観られるサービスというのはなかなか、時代を感じさせますよね。
 
Y『マンチェスター~』の場合はまた別で、Amazonが自分たちで映画を作るために、Amazonスタジオを作って、製作したものなんです。お金、持ってますね~。お二人は気になる作品はありますか。
 
H 『Hacksaw Ridge』はメル・ギブソンの監督作だし、期待して観たんですが、厳しくいうと……ちょっと雑かな。僕は父親はイギリス人ではありますが、日本人の僕からしたら、ちょっと出てくる日本人が現実的ではなかったですね。
 
Y 第二次世界大戦の終盤も終盤の沖縄地上戦で、日本人は決死の覚悟で戦っているわけです。その相手であるアメリカ兵たちが味わう恐怖の描写はさすがメル・ギブソン、本当に怖いです。ただ、現れる日本人たちのまあ、恰幅のよいこと。この時代の日本兵はもう栄養失調で、餓えてガリガリのはずなのに、結構なボリュームの人たちが出てくるんですよ。
 
H だから、「日本人じゃないのかなあ? アジア系かなぁ?」って、観ちゃったんですよね。
 
Y 撮影自体はオーストラリアなので、現地のアジア系、それでも日系人を中心にエキストラには使ったようですけどね。
 
H 世界的に観ると、気づかないかもしれないですけど、日本人の目で見ると、つい気になってしまいます。

Y 『沈黙‐サイレンス‐』ぐらい、ちゃんと作ってくれれば、誰も何も言わないですけどね。それから、この作品、もうひとつ、気になるところがあります。メル・ギブソンはDV問題などで一度、業界を干されています。この作品では、作品賞のみならず、監督賞もノミネートされ、「いよいよ、メル復活か」と言われています。ただし、アカデミー会員はスキャンダルに対して、厳しいですからね。果たして、破天荒なメル・ギブソンの動向は? というわけで、予想をお願いいたします。まずは前田さん。
 
A それはもちろん、『ラ・ラ・ランド』です。たまりません。最初の5分でテンション上がりまくります。
 
Y その後、めくるめくラブロマンスに突入という女子悶絶パターン。ELLEの公式ツイッターの読者投票でも『ラ・ラ・ランド』がダントツ、一位、80%の投票率でした。その次が玄人好みの『ムーンライト』『マンチェスター~』と続きます。
 
A おお、皆さん、いい線、いってますね。
 
Y 公開前だというのに、皆さん、ものすごいセンスがいいんですよ。ではハリーさん。
 
H 『ラ・ラ・ランド』はキャッチコピーがまた、いいですよね「あなたはこの映画を見て、恋をしたくなります」。まさにその通り! それでも僕はあえて、『LION~』で。
 
Y えっ、意外なところに!?
 
A それだけ、好きな、思い入れのある作品なんですね。
 
H そうなんです。自分のなかにすごく響きました。細かいことでいえば、デヴ・パテル、彼はイギリス人なんですけど、今回のオーストラリア訛りの英語がみごとでした。過去の作品もそうなんですが、『スラムドッグ$ミリオネア』や最近の『奇跡がくれた数式』ではインド人役として、インド訛りの英語を披露しています。本当に多才な方なんですよ。加えて、この作品、本当に画がきれい。何もない田舎から雑然としたコルコタに続く、車窓の風景なんて、バックに流れる音楽と相まって、胸がいっぱいになりました。まさしく、いまの時代にぴったりの愛あふれる映画じゃないかと思います。『ラ・ラ・ランド』『ムーンライト』『マンチェスター・バイ・ザ・シー』、このあたりが本命なのは重々承知のうえですが、ここはあえて『ライオン』で。それに、オスカーって毎回、ビッグ・サプ ライズがあるじゃないですか。

Y そうですね。ちょっと前までは監督賞、作品賞はかぶる傾向にありましたが、近年、ずらしてるんです。去年の例でいえば、作品賞は『スポットライト 世紀のスクープ』、監督賞は『レヴェナント: 蘇えりし者』のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥです。そんな風になるべく多くの作品に賞を与えようという雰囲気もあります。なので、今回も『ラ・ラ・ランド』が全部、取るのかといえば、そうとは言いきれない。
 
A それでも、『ラ・ラ・ランド』は作品か監督、どちらかは絶対、取りますよね。作品じゃないかなぁ。
 
Y 取ることは確実ですが、どっちでしょうか。私はもちろん『ムーンライト』でいきますが、こちらもどちらか取ってもおかしくない作品です。そうはいっても、片やミュージカル、片やゲイものって万全ではないんですよね(苦笑)。
 
A  あと8部門ノミネートされている『メッセージ』も気になりますが……。
 
Y とても不思議な世界観のSFで、現代に突然、知的生命体を乗せた宇宙船が現れて、その理由を調べようとする米軍、言語学者、数学者たちの人間ドラマです。監督が注目のドゥニ・ヴィルヌーヴ。カナダの監督なんですが、今年、公開の『ブレードランナー 2049』も手掛けています。いまイケイケドンドン状態ですので、今後、知っておいて損はない監督です。勢いはもちろん、今回、ノミネートされたことがきっかけでさらに、名前を上げたことでしょう。まあ、これから、また別の機会に取れるので、別に今回はいいですかね(笑)。

Movie: Hiroba Photo: Masaharu Arisaka(Portrait), Aflo Text: Aki Takayama Styling:Mayumi Ando(Atsuko Maeda), Yoshihiro Maeda(Harry Sugiyama) Hair & Makeup: Kotoe Hirano(Atsuko Maeda) 

  • 前田敦子(女優)
    1991年生まれ。女性アイドルグループAKB48の元メンバー。2007年に『あしたの私のつくり方』で女優デビュー。その後も『苦役列車』『もらとりあむタマ子』『イニシエーション・ラブ』など多数の映画やドラマに出演。『モヒカン故郷に帰る』で第11回アジア・フィルム・アワードで助演女優賞にノミネート。現在、出演ドラマ「就活家族」(テレビ朝日)が放送中。河瀬直美監督の短編映画『サポステ』WOWOW×日テレ×Hulu制作の『銭形警部』で出演中のHulu版が現在配信中。熊切和嘉監督作『武曲 MUKOKU』(2017年6月公開予定)が待機。

  • ハリー杉山(司会、モデル、タレント)
    1985年生まれ。イギリス人の父と日本人の母をもつ。幼少期を日本で過ごした後渡英、ウィンチェスター・カレッジ、ロンドン大学を経て、「ノンストップ!」(フジテレビ 毎週月曜~木曜 9:55~11:30)、「ANSWERS by fashiontv」(BSフジ 毎週金曜 24:00~24:25)、「POP OF THE WORLD」(J-WAVE 毎週土曜日 6:00~8:00)、4月3日より始まる「4時も!シブ5時」(NHK毎週月曜〜金曜16:00〜16:50)他多数のテレビ、ラジオ番組や雑誌、イベントMC等幅広く活躍中。ファッションやスポーツ、音楽、映画などにも造詣が深く、2016年12月開催の「エル シネマナイト」ではMCも務めた。

  • 司会:よしひろまさみち(映画ライター)
    1972年生まれ。東京都新宿区出身。音楽誌、情報誌、女性誌などの編集部を経てフリーに。映画を中心に、音楽、食、旅などの得意分野でライター・編集者として活躍中。エル・オンラインを始め、『SPA!』(扶桑社刊)『oz magazine』(スターツ出版刊)『sweet』『otona MUSE』(宝島社刊)『an・an』(マガジンハウス刊)など、雑誌やウェブで連載。日本テレビ系『スッキリ!!』で月一映画紹介のほか、テレビ、ラジオ、ニコ生などで映画紹介を担当。

  • 2017年オスカー候補作公開情報(文中登場順)

    『マンチェスター・バイ・ザ・シー』 2017年5月13日(土)より、全国公開 http://manchesterbythesea.jp/

    『Fences(原題)』 日本公開日未定 http://www.fencesmovie.com/

    『ムーンライト』 2017年4月より、TOHOシネマズシャンテ他にて公開 http://moonlight-movie.jp/

    『LION/ライオン 25年目のただいま』 2017年4月7日(金)より、全国公開 http://gaga.ne.jp/lion/

    『Hidden Figures(原題)』 日本公開日未定 http://www.foxmovies.com/movies/hidden-figures

    『最後の追跡』 公開中 https://www.netflix.com/jp/title/80108616

    『Nocturnal Animals(原題)』 日本公開日未定 http://www.metacritic.com/movie/nocturnal-animals

    『Elle(原題)』 2017年夏公開予定 http://www.gaga.co.jp/cinemas/detail/871

    『ラビング 愛という名前のふたり』 2017年3月3日(金)より、全国公開 http://gaga.ne.jp/loving/

    『ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命』 2017年3月31日(金)より、全国公開 http://jackie-movie.jp/

    『マダム・フローレンス! 夢見るふたり』 公開中 http://gaga.ne.jp/florence/

    『Hacksaw Ridge(原題)』 2017年6月24日(土)より、全国公開 http://hacksawridge.jp/

    『はじまりへの旅』 2017年4月1日(土)より、全国公開 http://hajimari-tabi.jp/

    『ラ・ラ・ランド』 公開中 http://gaga.ne.jp/lalaland/

    『ズートピア』 DVD発売中 http://www.disney.co.jp/movie/zootopia.html

    『レッドタートル ある島の物語』 2017年3月17日(金)より、DVD発売 http://red-turtle.jp/

    『モアナと伝説の海』 2017年3月10日(金)より、全国公開 http://www.disney.co.jp/movie/moana.html

    『My Life as a Zucchini(原題)』 日本公開日未定 http://www.imdb.com/title/tt2321405/

    『Kubo and the Two Strings(原題)』 日本公開日未定 http://www.kubothemovie.com/

    『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』 公開中 http://starwars.disney.co.jp/movie/r1.html

    『ジャングルブック』 DVD発売中 http://www.disney.co.jp/movie/junglebook.html

    『ドクターストレンジ』 公開中 http://marvel.disney.co.jp/movie/dr-strange.html

    『マリアンヌ』 公開中 http://marianne-movie.jp/

    『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』 2017年4月19日(水)より、DVD発売 http://wwws.warnerbros.co.jp/fantasticbeasts/

    『スーサイド・スクワッド』 DVD発売中 http://wwws.warnerbros.co.jp/suicidesquad/index.html

    『幸せなひとりぼっち』 公開中 http://hitori-movie.com/

    『スター・トレック BEYOND』 DVD発売中 http://www.startrek-movie.jp/

    『ヒトラーの忘れもの』 公開中 http://hitler-wasuremono.jp/

    『セールスマン』 2017年6月より、全国公開 http://www.thesalesman.jp/

    『Tanna(原題)』 日本公開日未定 http://www.imdb.com/title/tt4239726/

    『ありがとう、トニ・エルドマン』 2017年6月より、全国公開 http://www.bitters.co.jp/tonierdmann/

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