珠玉の名作たちがリバイバル!妻が語るジャック・ドゥミの素顔
2017/07/12(水)
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パリのアトリエのそばには、ドゥミの名前が捧げられた広場がある。

『ラ・ラ・ランド』監督の言葉に感銘を受けて

朝の10時にもかかわらず、ヴァルでダはトレードマークのおかっぱヘア、エルの取材を迎えてくれた。その様子は今年89歳とはまったく思えないほどに矍鑠としている。中庭にある、 「ジャック・ドゥミ広場」と書かれた看板のことを尋ねると、最近命名されたダゲール街の突き当たりにある広場のことだと教えてくれた。 「パリ市が一枚、わたしたちに分けてくれたの」 。そう語るヴァルダの顔に柔らかい微笑みが浮かぶ。
 
まずはヴァルダが最近観たという、ドゥミの大ファンであり映画『ラ・ラ・ランド』で彼にオマージュを捧げたデイミアン・チャゼル監督のことが話題にのぼった。「彼はジャックの家をどうしても見たいと言って、このアトリエを訪れたのですよ。 『シェルブールの雨傘』を観て衝撃を受け、それで映画を作りたいと思うようになったと語ってくれました。わたしは彼が世界中マージュをにジャックのオ届けて くれたことに、とても感銘を受けました。デイミアンの映画のなかにはオリジナルな点がたくさんあるけれど、同時にジャックの映画の参照も
少なくありません。だから彼の映画はアメリカのミュージカルのなかで、とても独創的だと思います。とくにストーリーがビター・スウィートで、とても儚い感覚がある点。 『ラ・ラ・ランド』で語られていたような、愛は儚く人生は脆いもので糸はすぐに途切れてしまう、愛はまだそこにあるけれどそれぞれが自分の人生を歩む―こうした要素はまさに、ドゥミ映画のエスプリだと思います」

オフィスのアイドル、愛猫のニニ。

ヴァルダはドゥにこだわったミがミュージカル理由をこう分析する。
「彼の映画にはどれも子供時代からの影響が色濃く出ているのですが、音楽もそのひとつです。ジャックはつねに音楽に囲まれていた。当時はまだラジオの時代で、彼の実家のガレージではつねに仕事中もラジオがかかっていて、みんなでよく一緒に歌っていたそうよ。それにジャックはよくお母様とオペレッタを観に行ったと話してくれました。もちろん、映画館にも足繁く
通っていて、そこでアメリカのミュージカルを観て育ったのです。そんなさまざまな影響によって、ミュージカルへの愛情が育まれたのだと思います」このあたりの事情は、ドゥミの要望でヴァルダがメガホンを握ったドキュ・フィクション『ジャック・ドゥミの少年期』でよく表現されている。回想と現代が自在に混ざるスタイルで、生前のドゥミの最後の姿が収められた、ヴァルダの愛情の結晶とでも呼びたくなる作品だ。ヴァルダにドゥミの映画のなかで最も好きなものを尋ねると、こんな答えが返ってきた。
 
「たぶん『ロシュフォールの恋人たち』ね。台詞と歌詞が素晴らしいし、ジャックの作品のなかでいちばん幸福な映画だから。それにあの映画を撮っているときの彼は、とても幸せそうだったのです」インタビューが終わる頃、どこからか愛猫のニニがすり寄って来た。彼女を愛おしそうに抱き上げ、 「一緒に写真を撮ってもらうのはどうかしら」と提案するヴァルダのおちゃめな可愛らしさに、ますます彼女のことが好きになる思いだった。

Photo: TAKESHI MIYAMOTO(Agnès Varda), Aflo  Text: Kuriko Sato 

  • 【NEWS】 ドゥミとヴァルダの名作が映画館で上映!
    特集上映『ドゥミとヴァルダ、幸福についての5つの物語』が、7月22日よりシアター・イメージフォーラムほかで公開。上映作は『天使の入江』『ローラ』『5時から7時までのクレオ』『幸福(しあわせ)』『ジャック・ドゥミの少年期』。秋には『ロシュフォールの恋人たち』も公開予定。http://www.zaziefilms.com/demy-varda/

  • アニエス・ヴァルダ
    1928年、ベルギー生 まれ。1954年、初長編をアラン•レネ編集で監督。『5時から9時までのクレオ』で注目を集める。夫のジャック・ドゥミとともにヌーヴェルヴァーグを牽引。代表作に『幸福』『冬の旅』『落葉拾い』『アニエスの浜辺』等。今年のカンヌ映画祭ではJRとコラボしたドキュメンタリーを発表している。

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