特集 2017/6/28(水)

イザベル・ユペール×是枝裕和が語る映画と女性とフェミニズム

6月23日(金)に飯田橋のアンスティチュ・フランセで開催された「ウーマン・イン・モーション」。是枝裕和監督を迎えて行われた対談の場に潜入。来日したイザベル・ユペールが語る女優人生と、そこから見えてくるフェミニズムとは?

『ピアニスト』より

恋とセックスを爆発させる女性ピアノ教師

次に話題に上ったのもかなりショッキングな女性。カンヌ国際映画祭で全会一致にてユペールに2つ目の女優賞をもたらした『ピアニスト(’01)』のエリカも、清楚で冷淡なピアノ教師だが夜な夜なビデオボックスに通いポルノ映画を楽しむ、衝撃的な役柄。自分に向けられた年下の美しい青年の愛情を自ら破壊していく女性を描いた傑作だ。そんな彼女もユペールはこう解釈。
 
「非常に強烈な美学が彼女にはあって、恋愛感情に抑圧があることで、対象にそれを爆発させてしまう。魅惑するということと愛することを混同してしまっているのよ。だから相手は彼女に驚異を感じてしまう。でもそうやって相手が離れていくことも怖い。だからこそ、恋人が離れていきそうになると愛するのではなく、支配してしまおうとするの」。

       
   La Pianiste    
   La Pianiste Bande-annonce VF  

レイプ犯を何事もなかったかのように執拗に死に追い詰めていくミシェル、駐車場で他人のセックスをのぞき見し放尿するエリカ、親の株券を盗んで逆ギレする滑稽なオールドミス、生きていくために闇の中絶に手を染めるマリー……ハリウッドの女優たちが尻尾を巻いて逃げるような役も、なぜ彼女が演じるとただのインセインなキャラクターで終わらないのか。それは、どの役も“モンスター”ではなく、ユペール自身と同じひとりの女性として受け入れたから。

「役作りはしないわ。役が私になるの」

その証拠によく役者が血道をあげがちな“役作り”についてこう語っている。
 
「役作りはしないわ。役が私になるの」。
  
下手な役者が言えば、ものすごく傲慢な言葉に聞こえるユペールが放ったこの言葉は、今回の対談を通してどんな役でも自分と同じ人間という地平に引き上げる、暖かで寛容なひと言に聞こえてきた。
  
彼女のそんな姿勢をさらに裏付けたのが、最後に『8人の女たち(’02)』で演じたオーギュスティーヌについて是枝監督と語ったとき。

https://www.youtube.com/watch?v=-oGQoxZ7lvs

日本でも異例のヒットとなったフランソワ・オゾンによる、キッチュでポップなソープオペラ風サスペンス。この作品のなかでユペールが演じたのが、とりわけ異彩を放っていた面白いおかしいエキセントリックなオーギュスティーヌ。

 
是枝監督がお気に入りという、彼女がついた嘘がバレそうになり逆ギレするシーンを見ながら、ユペールは「彼女はオールドミス。突然極端に別人になる陰と陽をもつ人。演じるのはどの役でも楽しいものよ。衣装もそうだし。子供が遊ぶようなもの。あの作品はある意味とても人工的だったから特にね(笑)。オゾンの指示もそうだった」と解説しながら最後にこう補足した。
 
「でも私はどの人格にもリアルさを持たせたいのよ」。

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