特集 2017/6/28(水)

イザベル・ユペール×是枝裕和が語る映画と女性とフェミニズム

6月23日(金)に飯田橋のアンスティチュ・フランセで開催された「ウーマン・イン・モーション」。是枝裕和監督を迎えて行われた対談の場に潜入。来日したイザベル・ユペールが語る女優人生と、そこから見えてくるフェミニズムとは?

仏大女優、日本を代表する監督を対談相手にご指名

2017年オスカーノミニーにもなった仏大女優のイザベル・ユペール。25回目を迎えたフランス映画祭のため来日した彼女たっての希望で是枝裕和監督との対談が実現した。ファッション・コングロマリットである「ケリング」がカンヌ映画祭をはじめ各地で展開している女性映画人のためのカンファレンス「ウーマン・イン・モーション」で、ユペールが演じてきた代表的な3つのキャラクターを通し、映画における女性の描き方、そして映画界が社会に対して担う役割について語った。
  
先に登壇していた是枝監督が「緊張してきた」と言いながら迎えたのは、真っ赤なドレスに黒いパイソンレザーのバイカージャケットを羽織って登場したイザベル・ユペール。「コンニチワ……? これでよかったかしら。ごめんなさい、日本語はこれだけしか知らないの」とおどけて見せるなどご機嫌な雰囲気でスタート。

『主婦マリーがしたこと』より

Photo : Aflo

女性史上最後のギロチン台犠牲者を演じて

まず是枝監督がピックアップしたのが、ヴェネチア国際映画祭で女優賞を獲得した『主婦マリーがしたこと(’88)』のタイトルロール、マリー。
 
「クロード・シャブロルとの2回目の仕事だったけど、女性としてフランスの歴史上最後にギロチンにかけられた人を演じたわ。第二次大戦下だからとても困難な時期で、堕胎を施したことで死刑になったの」と、かなりショッキングなキャラクターを淡々と説明したユペール。是枝監督から、戦場から帰ってきた夫と久しぶりに出会ったシーンがあまりにもそっけない点を取り上げられると、ユペールはマリーを“闇の人工妊娠中絶で金を稼いだ女”ではなく、“戦争に翻弄され懸命に生きようとする女性”として説明。
 

「女性にとっては悲惨な時代を描いていて、とても政治的な作品。そういう時代には人間性を失っていくものよ。しかも、マリーは2人の子供を育てなければいけなかったから。一方で彼女は歌手になりたいという夢ももっている。歌に固執しているでしょう? すごく貞節で無垢だからこそああいう(二面性をもつ)女性になる。だから(淡々と人工妊娠中絶を施してお金を稼ぐ部分と同時に)無垢な面を出さなければいけないと思ったわ。政府の偽善によって彼女は死刑になったのだから」。

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