特集
2017/10/05(木)

ピンク・リボンとエミー賞女優の告白で見えてくるアメリカの現実

10月に入り、今年も米国発の乳がん意識向上月間がスタート。スカイツリーがピンク色に染まり、ファッションやビューティブランドもキャンペーンを展開。でもこれほどまでにアピールしなければいけない理由って? エミー賞女優がSNSでつぶやいた告白にその疑問への回答が集約されていた。

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2017年の調査では、米国のミレニアル世代18歳~24歳の57%は、預金1,000ドル(約11万円)以下。そのうち39%は1ドルも預金がない状態で生活している。(「GoBankingRates」)

Photo: Getty Images

若い人ほど晒されるリスク

さらに深刻なのは、乳がん治療費が若年層であればるほど高額になるというリサ―チ結果。同じロイターの報道では21歳~44歳では平均97,486ドル(約1,100万円)にのぼる。これは乳がん検査費用が高いため収入が少ない若年層のほうが検査を受けることが難しく、さらに若い人ほど進行が早く見つかったときに悪質ながんになっているケースが割合として高い(※)ことが理由のひとつにあげられるそう。

メジャーリーグの会場でもピンク・リボン・キャンペーン。

Photo: Getty Images

そもそも公的医療保険が低収入層や高齢者のためにある米国では、医療保険は民間保険会社による寡占状態になっていて、これが公的保険に切り替われば、多くの企業が大ダメージを受けるうえ、医療費そのものが高額化していることもあり、4700万人とも言われる低所得の非加入者と同じ保険に入ることで、今よりもっと保険料をとりたてられると恐れる高所得者も大勢いる。

ライトアップされたローマ市庁舎。

Photo : Getty Images

さらに医療費高額化の背景には、「もうけすぎ」とも言われる外科医の存在もある。経済誌『フォーブス』が2015年、人材派遣機関のデータをもとに報告したところによると、アメリカの一般外科医の平均年収を339,000ドル(約3,800万円)。技術習得に時間がかかる外科医はスキルが上がる程人件費が高く買い取られるため、ますます高額化している。こうなると乳がん患者に外科的手術が必要となった場合、より一層、治療を受けること自体が難しくなってしまう。
 
だからこそ発症リスクを減らし、患ったとしても早期発見し、かかるコストを減らすことがいちばんの得策。女性たちへの予防意識向上や、できるだけ安価に、可能な限りスピーディに検診と治療ができるように研究を促す必要性がますます高まっている。そしてそれは皆保険制度が整っていても、有益なこと。街で見かけたリボンに米国医療の現実を重ねてみれば、ピンク色はもっと深い色に見えてくるかもしれない。

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