ピンク・リボンとエミー賞女優の告白で見えてくるアメリカの現実
10月に入り、今年も米国発の乳がん意識向上月間がスタート。スカイツリーがピンク色に染まり、ファッションやビューティブランドもキャンペーンを展開。でもこれほどまでにアピールしなければいけない理由って? エミー賞女優がSNSでつぶやいた告白にその疑問への回答が集約されていた。
ジュリア・ルイス=ドレイファスが乳がんを告白
Just when you thought... pic.twitter.com/SbtYChwiEj
— Julia Louis-Dreyfus (@OfficialJLD) 2017年9月28日
先日9月28日、エミー賞主演女優賞を6年連続で受賞した「Veep」のジュリア・ルイス=ドレイファスが乳がん患者であることをツイッター上で告白。大きなニュースとなった声明にはこう書かれている。
「8人に1人の女性が乳がんにかかります。今日、私はそのひとりとなりました。いいニュースはサポートしてくれる、家族や友人など素敵な人たちに囲まれていること、そして(俳優)組合を通じてすばらしい保険があることです。悪いニュースはすべての女性が私ほど恵まれてはいなことです。ですから、すべてのがんと闘うべく、国民皆保険を実現しましょう」
オバマ前大統領が進めていたが、トランプ政権が終わらせようとしている(公的)皆保険制度をわざわざ引き合いに出したことで、「自分の病すら利用した」とジュリアの民主党熱を揶揄する人もいる。
しかし、彼女のタイムラインをたどれば、そこには乳がん検査・治療にともない女性にのしかかってくる高額な医療費、皆保険がある日本と比べはるかに厳しいアメリカの医療を取り囲む状況はへの懸念が透けてみえる。
「ロイター通信」が2017年5月に報道したところによると、45歳~64歳の女性が乳がんと診断された後の1年でかかる平均治療費は75,730ドル(約855万円)。とてもではないけれど、簡単に払える額ではない。NY在住ライターによれば日本の保険制度と異なり、多くの民間保険会社はコストが発生してからその後保険金を払う仕組みなので、一旦は全額、もしくは頭金を払い終えなければならないそう。そのため、医療費破産が続出。乳がんになったことで破産申請をする人や、治療費の一部すら払いきれない人はたとえ発覚しても、治療を受けないまま放置せざるをえない人もいるのだとか。実際『ニューズウィーク』誌は「深刻な状態」と診断された患者のうち43%は医療費のために治療を拒否していると報告した。