カルト界の巨匠ポドロフスキーと気鋭ラライン。チリのふたりの映像詩人の新作が日本で公開!
『スターウォーズ』や『エイリアン』、『ブレードランナー』など多くの名SF映画に多大な影響を与え、88歳今も尚カルト映画界の巨匠として活躍している監督、アレハンドロ・ホドロフスキーと『ジャッキー ファーストレディ 最後の使命』では、ハリウッドにも進出した気鋭パブロ・ラライン。2016年カンヌの監督週間にも揃ってノミネートされた2人の最新作を立田敦子さんが解説。
ホドロフスキーのあの傑作の続編『エンドレス・ポエトリー』
現実とファンタジーを融合させた独特の表現方法、マジックリアリズムの本家本元といえばガブリエル・ガルシア・マルケスの「百年の孤独」に代表されるように、ラテン・アメリカ文学だ。南米にもこの影響を受けた面白い映画作家が多い。その重鎮的存在がチリ出身のアレハンドロ・ホドロフスキー、88歳である。
ロシア系ユダヤ人の移民の子としてチリのトコピジャに生まれた彼は、パリやメキシコなどで放浪生活を送り、映画監督としてデビュー。1970年に発表したプリミティブな西部劇ともいえる『エル・トポ』がカルト映画となり、アンディ・ウォーホール、ジョン・レノン、ミック・ジャガーなどからも熱狂的な支持を受けた。75年にはSF大作『デューン』の映画化を企画するが頓挫(※のちにデヴィッド・リンチがハリウッドで『デューン/砂の惑星』(84年)として映画化した)。が、バンド・デシネのカリスマ作家メビウスやH・R・ギーガーらのクリエーター、音楽はピンクフロイド、俳優としてはサルバドール・ダリなども集められるなど、この企画に関する逸話は伝説となった。その顛末はドキュメンタリー『ホドロフスキーのDUNE』(13年)に詳しいが、この“未完の傑作”がスターウォーズやエイリアン、ブレードランナーなどSF映画の傑作に与えた影響は多い。
90年代からは沈黙を守っていたが、そんなポドロフスキーが23年ぶりに撮った作品が『リアリティのダンス』(13年)である。軍事政権下での少年時代を幻想を交えながら描く、まさしくマジックリアリズムと呼びたいポエティックな伝記映画は、ホドロフスキーファンを中心に熱狂的に迎えられた。
そして、その続編『エンドレス・ポエトリー』が公開になる。故郷のトコピージャを離れ、首都サンティアゴで暮し始めたアレハンドロは、抑圧的な両親の支配から逃れ、自らの道を模索していた。エンリケ・リンやニカノール・パラといったのちに世界的な詩人となる芸術家との交流や初恋などが前作同様に空想を交えながら私的に語られる青春譚だ。 70年代、多くのクリーターやアーティストが熱狂したその世界観の魔力は健在で、この作品でまた多くの新たなファンを獲得するはず。ちなみに、アレハンドロを演じるのは、ホドロフスキーの末息子である俳優でミュージシャンでもあるアダン・ホドロフスキー。撮影は、香港映画などでも活躍したクリストファー・ドイルが担当している。
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『エンドレス・ポエトリー』
監督/アレハンドロ・ホドロフスキー
出演/アダン・ホドロフスキー、パメラ・フローレス
配給/アップリンク
公式サイト/http://www.uplink.co.jp/endless/
2017年11月18日(土)より新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町、アップリンク渋谷ほか全国順次公開
Text: Atsuko Tatsuta