女優魂が光る! ジャン=マルク・ヴァレ監督の新作2本に注目
昨年は、『ダラス・バイヤーズクラブ』でマシュー・マコノヒーがアカデミー賞主演男優賞を受賞したジャン=マルク・ヴァレ監督。俳優の隠れた資質を引き出す名手、ヴァレ監督の新作は、ヴァネッサ・パラディ主演の『カフェ・ド・フロール』と、リース・ウィザースプーン主演の『ワイルド(原題)』。女優魂を突き付けられる2作品をお見逃しなく!
ヴァネッサ・パラディの存在感が圧倒的
さて、『ダラス・バイヤーズクラブ』と『ワイルド(原題)』という2本の実話の前に撮った、自らが脚本も手がけたオリジナルストーリーが『カフェ・ド・フロール』だ。
1960年代のパリ。美容師のジャクリーヌ(ヴァネッサ・パラディ)は、障害をもって生まれた幼い息子ローランを、自活できる人間にしようと女手ひとつで懸命に育てている。一方、時代は飛んで現代のモントリオール。DJとして成功しているアントワーヌ(ケヴィン・パラン)は、ふたりの娘をもうけた妻キャロルと別れ、若い美女ローズと熱愛中だが、キャロルの方は離婚後もその痛手から立ち直れないでいる。夢遊病に悩まされるキャロルは、小さい男の子の幻影を見るようになるが、それが何を意味するのかはわからない……。
時代を経て展開されるふたつの愛の物語は、どんな風に結びついていくのか。ミステリアスな展開の果てに思いもかけない結末が用意されている。愛という強い感情の引力を信じるこの監督のロマンチシズムの結晶ともいえる物語だ。
息子を心から愛するパリで暮らすシングルマザー、ジャクリーヌを演じたヴァネッサ・パラディの存在感がすごい。ジョニー・デップと出会いふたりの子どもを授かってからは家庭中心の生活を送っていたが破局。事実上、この作品がスクリーンの本格復帰作となるが、そこには元ロリータ・アイドルの片鱗は見られない。母の優しさ、母の逞しさ、母の慈愛の深さ。溢れるような母性を、ヴァネッサは見事に体現している。こうしたヴァネッサの女優としての新しい資質を掘り起こしたヴァレの演出家としての手腕に改めて感服した。
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『カフェ・ド・フロール』
監督/ジャン=マルク・ヴァレ
出演/ヴァネッサ・パラディ、ケヴィン・パラン
配給/ファインフィルムズ
公式サイト/http://www.finefilms.co.jp/cafe/
2015年3月28日(土)~、YEBISU GARDEN CINEMA、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開
text : Atsuko Tatsuta