菊地美升シェフが得意とするのは、豚の血や脳味噌などを使った内臓料理。食わず嫌いになってしまいがちな食材だが、シェフの手にかかれば大好物に早変わりするものも少なくない。食材のよさを残しながらも、なめらかで繊細な皿に昇華させ、秋から冬にかけて登場するジビエ料理もスペシャリテとして愛されている。テリーヌのかたちが特徴的な「ブーダン・ノワールのテリーヌ仕立てリンゴのサラダ添え」は、オープン当時より作り続ける代表作。じっくりと時間をかけて火を入れることできめ細やかな口当たりが完成する。ゲストを見送る笑顔が印象的なシェフだが、店で働く弟子たちも同じ顔で送り出す。「若い料理人が、笑って明日も働けるように見送るんです。僕が叱らなくても、二番手、三番手が充分厳しくしていますから」とほほ笑む。