フライパン一本で操る肉料理の火入れの達人
北島亭/Kitajimatei
「肉はかたまりで焼いたほうが絶対に旨い」と、仔羊のローストでもローストチキンでもフライパン一本で焼き上げる。ゆっくり、じっくり、肉を休ませながら火入れをしていき、仕上げはしっとりやわらかく、絶妙な焼き加減だ。“神業”と呼ばれる今の方法に至るまで30年以上もかかった。「悩み、苦しんだ分、この料理はいろんなことを教えてくれた」。そしてまだまだ進化中、と北島素幸シェフは言う。「人にできないものを提供してこそプロ」。いくつになっても築地通いは欠かさない。食材を目で見て確かめないと気が済まないからだ。おいしさが雲泥の差だから、付け合わせのさやいんげんやにんじんだって作りおきはしない。それも「お客さんにおいしいものを食べてほしいという一心」から。北島シェフを突き動かしているのは、フランス料理への深い愛だ。
この店の存在が人生を変えたと語るのは、「アジュール フォーティーファイブ」のシェフ、宮崎慎太郎さん。「いまだに北島亭を超える仔羊のローストに出会ったことがありません。今の自分とは全く違う、いわゆる料理人の“経験”と“勘”に頼った焼き方。それがピタリとはまると、人の手による温かみや思いがそのお皿に宿るのでしょうか? その経験をもとに自分にはどのようなスタイルが合っているのか、考える材料になった貴重な思い出です」。
SHOP INFORMATION
ランチ/11:30~13:30L.O.,ディナー/18:00~19:30L.O.
水曜、第1・3火曜
photo : Kan Kanbayashi text : Yumiko Takayama