特集 2016/8/22(月)
世界のおやつ from Bologna / Mari

イタリア・ロマーニャ地方のソウルフード「ピアディーナ」を求めて!

20年近く前に私が初めて訪れたイタリアの町、Rimini(リミニ)。当時、お世話になった友達のマンマは、言葉も通じない初対面の私をありったけの力を込めた抱擁で迎えてくれました。そんな愛情たっぷりのマンマが「一緒に作りましょう!」と言ってくれて、私が初めて作ったイタリアの郷土料理が、今回紹介する「Piadina(ピアディーナ)」。リミニをはじめとするロマーニャ地方の、大らかで面倒見がよく、笑顔あふれる人々のソウルフードです。

昔は、ロマーニャ地方に住む貧しい人たちに、パンの代用品として食べられてきた「ピアディーナ」。基本の生地は、小麦粉、ラード、水、塩といったシンプルな材料のみで作られています。そして、トルティーヤのような丸く焼いた生地に、さまざまな食材をはさんで食べるのが通例。イタリアでは、「Piadina Romagnola(ピアディーナ・ロマニョーラ : ロマーニャ地方のピアディーナ)」として知られていますが、ロマーニャ地方では方言で「Piada(ピアーダ)」と呼ばれており、人口15万人のリミニだけでも専門店は40件以上あると言われています。そんななかで、地元の人々が愛してやまないPiadineria(ピアディネリーア:ピアディーナ専門店)と言えば、こちらの「Dalla Lella(ダッラ・レッラ)」。

1か月前にリニューアルした店舗は海からもほど近く、テラスは花であふれ、解放感で満たされています。そんな「ダッラ・レッラ」を30年前にスタートさせたのが、こちらのLella(レッラ)さん。かわいらしい花で飾られた帽子がトレードマークです。

お孫さんたちに囲まれて。お孫さんたちは「おばあちゃん(nonna : ノンナ)」ではなく「おばちゃん(zia : ツィーア)」と呼んでいる。

創業当時はピアディーナの専門店はなく、お年寄りが小さな店で細々と販売していたそう。そんななか、レッラさんはまだ小さかった子どもたちを養うために「3年で軌道に乗らなければ辞める」と覚悟を決めて、1986年にピアディーナ屋をスタート。経営経験もなく小さな店舗からのスタートでしたが、店の前に遊びに来る子供たちに不格好なピアディーナをプレゼントすることでそのおいしさの評判が広がり、徐々に軌道に乗っていったといいます。

30年前のピアディーナの具材と言えば、チーズやハム、トマトやナスにパン粉を載せてオーブンで焼いたものをはじめ、数種類のみ。しかし、お客様を呼び込むためにアイデアをひねり出さねば、と飲食店の従業員として20年間働いた経験を活かして、レストランで使われていた食材をピアディーナに取り入れていったそうです。「いわしのマリネ&ルッコラ」から始まり、今ではピアディーナの大定番になっている「生ハム、チーズ、ルッコラ」まで。実はこの組み合わせは、なんとレッラさんが考案したんですって!! トマトピューレもレッラさんいちおしの「Pezziol(ペッツィオル)」ブランドのものを使用し、ほかの食材も高品質なものを選ぶことで他店と差別化を図っていきました。今では、具材をはさむ前のピアディーナだけでもローズマリー風味やスペルト小麦を使ったものなど全部で13種類もあります。

また、ピアディーナのバリエーションとして、焼く前のピアディーナ生地に具をはさみ、手でふちを閉じて半月状にして鉄板の上で焼く「Cassone(カッソーネ)」もあります。大きな鉄板の上で、ヘラを使いながら見事な手さばきでカッソーネをひっくり返す様子は何とも心地よいもの。実は、今では多くのピアディーナ屋で使われているこの大きなガス製の鉄板の原型も、レッラさんが鋳造所に「鉄板に万弁なく火がいきわたって、いくつもピアディーナを置いても焦げないものを作って」と依頼してできたもの。まさにレッラさんは、現代のピアディーナ屋の母と言える存在なのです。 

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cooperation : Veronica Frison

  • Mari●大手経営コンサルティング会社にて経営コンサルタントとして勤務後、2006年に渡伊。2人の男の子のマンマをしながら「フェリチターリア」の通訳・翻訳者・FAI(イタリア環境基金)認定の文化・芸術メディエーターとして、「食の都」ボローニャを中心にイタリアの魅力を発信中。
    http://www.felicitalia.net/

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