特集 2015/1/19(月)
世界のおやつ from Bologna / Mari

門外不出のレシピ! 伝説のチョコレートケーキ「トルタ・バロッツィ」

1月も後半に入ってくると、アモーレの国イタリアでもバレンタインデーが気になり始めるころ。こちらでは2月14日は「フェスタ・デッリ・インナモラーティ(Festa degli innamorati:恋人たちの日)」と呼ばれ、男性も女性も、愛する人にメッセージやプレゼントを渡します。日本同様、ここイタリアでも、チョコレートは花束に並んでプレゼントの主役級アイテム。おいしい「メイド・イン・イタリー」のチョコレートは数えきれないほどありますが、今回はその中でも特にイチオシのチョコレートケーキをご紹介します!

ボローニャから車を郊外に走らせること40分、さくらんぼで有名な人口2万4千人の小さな町、ヴィニョーラ。この町のお城のすぐ近くに、イタリアのみならず、世界中からも引く手あまたのチョコレートケーキ「Torta Barozzi(トルタ・バロッツィ)」を作り続けているお菓子屋さん、「パスティッチェリア・ゴッリーニ(Pasticceria Gollini)」があります。

このパスティッチェリアは、1887年に今のオーナーの曽祖父であるEugenio Gollini(エウジェニオ・ゴッリーニ)氏によってオープンされました。彼は自分や家族のために誇れるような何かを作り上げたいという一心で、オリジナルのトルタの開発に挑みます。来る日も来る日も、トルタを作ってはお客様に味見をしてもらい、意見をいただいて、また分量や作り方を改良する……ということを繰り返し、「もうこれ以上のものは作ることができない」と、自分で納得がいったとき、レシピを完成させました。そして、このトルタを「Torta Nera(トルタ・ネーラ)」と呼び、販売をスタートしたのです。

お店の代表的なお菓子のパッケージにもなっているエウジェニオ氏。店内にも彼の写真が飾ってあります。

そこから20年近い年月を経た1907年、ヴィニョーラでは16世紀にローマを拠点として活躍したヴィニョーラ出身の建築家Jacopo Barozzi(ヤコポ・バロッツィ)氏の生誕400年祭が行われ、これを機にエウジェニオ氏は彼のトルタに「バロッツィ」を冠し、「Pasta Barozzi(パスタ・バロッツィ)」と改名。その後、最終的に現在の名前である「トルタ・バロッツィ」に変更して商標登録を行いました。そのため、「トルタ・バロッツィ」と名乗れるのは、「パスティッチェリア・ゴッリーニ」のチョコレートケーキのみ。類似品は“バロッツィ風”などと書いてあります。

こちらは「パスタ・バロッツィ」と呼ばれていた当時の「トルタ・バロッツィ」が入っていた唯一現存するオリジナルの箱。その後、箱はバロッツィ氏の写真入りになりましたが、2014年6月に新たに追加した400gサイズの箱としてオリジナルデザインが復活しました! この頃、既にヴィニョーラ近郊では人気を博していた「トルタ・バロッツィ」ですが、1911年にローマで開催された万国博覧会(エキスポ)で、エウジェニオ氏がトルタを開発した功績を称えらたのを機に、「トルタ・バロッツィ」の名がイタリアをはじめとする世界中に轟くこととなりました。
 
たとえば、モデナにある3つ星レストラン「Osteria Francescana(オステリア・フランチェスカーナ)」のシェフ、Massimo Bottura(マッシモ・ボットゥーラ)氏も「トルタ・バロッツィ」が大好きで、写真の背景に写っているグルメ書『Vieni in Italia con me(ヴィエニ・イン・イタリア・コン・メ)』には彼が自ら写真付きでこのお菓子のことを書いています。ちなみに、彼のレストランは「世界のベストレストラン50」において2013年、2014年と世界第3位(イタリアで1位)を獲得し、いま世界でもっとも注目されているシェフのひとりです。
 
このトルタが多くの人から熱望されるにつれ、「トルタ・バロッツィ」を自分たちでも作りたい!」というお菓子職人もたくさんでてきました。しかし「トルタ・バロッツィ」の作り方は、4代続く今でも家族以外は門外不出。ネット上には、これまでに国内外の多くの人々が再現を試みた結果のレシピがわんさか。また、「パスティッチェリア・ゴッリーニ」のホームページに紹介されている新聞や雑誌の取材記事を読んでみても材料に違いが……。ということで、今回はそのレシピの真相に迫るべく、材料や作り方に関して現在のオーナーであるFranca (フランカ)さんとPaola(パオラ)さん姉妹に直接伺ってきました。

左からフランカさんとパオラさん。

「材料についてですが、過去に日本で紹介された雑誌にはヘーゼルナッツが入っていると書いてありましたが、他のイタリアの新聞や雑誌ではピーナッツとなっています。実際のところはどうですか?」と質問すると、「これは間違いね。ヘーゼルナッツは入っていなくって、ローストしたピーナッツが入っているのよ」とのこと。そして「こっちにはラムが入っていると書かれていますが、このレシピにはないのですが……」と尋ねると、「これは唯一、初期に材料から取り除いたものよ」と、惜しげもなく答えてくださるではないですか!? 「ネット上で、エスプレッソを淹れた後の粉を加える、っていうレシピもあったのですが」と伺うと、「あー、あれはテレビ番組が『トルタ・バロッツィ』を紹介した時に勝手にでっちあげた作り方で、全くの作り話。エスプレッソを淹れた残りなんて加えたらおいしくなくなっちゃう。コーヒーはデカフェを使ってるわ。ふふふ」とチャーミングに笑うパオラさん。続けて「今までいろんなレシピを見てきたけれど、どれを見ても『これも違うわね、これも違うわね』と家族で言いあってるわ。材料は、原材料表示のところにすべて書いてあるのよ。でもね、材料の“分量”と“作り方”は秘密なの」と商品の裏を見せながら語ってくれました。

と、ここで特別「トルタ・バロッツィ」の材料をご紹介! 
 
砂糖、ローストピーナッツ、卵、トランス脂肪酸を含まない植物性マーガリン、ブラックチョコレート(カカオ60.1%以上)、バター、ローストアーモンド、ココアパウダー、カフェインレス・コーヒー、以上。
 
この材料を、トルタの誕生から100年以上たった今でも変わることなく、曽祖父であるエウジェニオ氏の時代から受け継がれてきた秘密の分量で配合し、家族以外はその現場を見ることが許されていない製法で作られています。しかも、オーブンは昔から現在まで薪のオーブンを使用されているとのこと!
 
さて、ここまで多くの人の心を鷲づかみにしてやまない「トルタ・バロッツィ」の正しい食べ方とお味をご紹介します。
 
>>「トルタ・バロッツィ」の正しい食べ方とそのお味は……

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  • Mari●大手経営コンサルティング会社にて経営コンサルタントとして勤務後、2006年に渡伊。2人の男の子のマンマをしながら、「フェリチターリア」の通訳者・翻訳者・個人旅行同行アシスタントとして、「食の都」ボローニャを中心にイタリアの魅力を発信中。
    http://www.felicitalia.net/

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