モード誌の編集長がキャリアを活かしてスタートした旅プロジェクト
今年スタートしたばかりの「キロメートル」。日本にもさっそく上陸し、4月にスーパー エー マーケットでポップアップストアを開催。パリのモード界に影響を与えるインフルエンサーとしても注目を集めるアレクサンドラが、ブランドを始めようと思ったきっかけとは?
「随分前にパキスタンへ行ったとき、とても高価な結婚式用のストールに出合ったの。24金が入った糸を使っていて、一人の職人だけが作れるものなんだけど、そのマダムがいなくなったら、もうそれを作れる人がいないというのが、すごく引っかかっていて。それが『キロメートル』を始めるきっかけになったかもしれない。個人でもモードの作り手たちを守って行きたいと思っているのよ」
刺しゅうにGPSのモチーフを取り込み、デジタルをアナログで表現する手法も話題に。そのアイデアはどこから?
「仕事柄ロケやバカンスで訪れるたびに、現地ならではの魅力とリュクスでモードなものが掛け合わされているところがいいなと思っていたの。フィリップ・スタルクのモダンな内装のホテルや、『ルイ・ヴィトン』と村上隆のコラボなど、フランスと他文化をつなげてみたいと思って。いまはGPSを刺しゅうで表すというのが、21世紀的なアイデアだと感じてる。そして無名の街がこのプロジェクトで、有名になっていくことも願ってるの」
2016年の秋冬シーズンに新しく、取り入れたモチーフには“ニセコ”も。
「今フランス人にはあまり知られていないニセコは、東京オリンピックが開催される2020年には新幹線が開通するから、ぐっと認知されるようになる。数年前に代官山のTSUTAYAができたことで、街が素敵に変わって行くような。ここ来るな!と思うところをいち早くモチーフにするのが、私のキャリアを生かした先見のよさかしら(笑)。観光目線ではないパリを描写したシリーズも人気で、今シーズンはエッフェル塔を下から見たときのイラストをシャツ(写真右下)に表現したりしてるのよ」
-
PROFILE: ALEXANDRA SENES/アレクサンドラ・セネス
アフリカ・セネガル生まれ、NY育ち。パリでキャリアをスタートし、『エル』をはじめ、数々の雑誌でエディターとして活躍。2006年にモード誌『ジャルーズ』の編集長に就任。幼少時代から異国文化に触れて育ち、仕事やプライベートで数えきれないほど旅をしてきた経歴から、「旅」を通じて各国のサヴォアフェール(職人技術のノウハウ)を現代的な解釈で伝える、シャツとワンピースのブランド「キロメートル」を2016年スタート。
photo: YUSUKE KINAKA coordinate: HIROKO SUZUKI
-
「キロメートル」公式サイト(英語)
https://kilometre.paris/