アイコンとして輝いた元祖セレブスター
ブルック・シールズ
あれほど隆盛を極めたニューシネマがなぜ'70年代の終焉とともに終わってしまったのか? それは簡単。出演していた俳優の年齢が上がりすぎて、共感できなくなった若者が映画館に行かなくなってしまったから。このためハリウッドは'80年代に入ると10代から20代前半のフレッシュな若手俳優を一転してプッシュするようになった。こうしたトレンドは日本にも影響を及ぼし、映画専門誌は一気にアイドル雑誌化。ジェニファー・ビールスやダイアン・レイン、モリー・リングウォルドといった女優たちが毎月のように巻頭グラビアを飾るようになったのだ。そんな彼女たちが演じる役は、テンパりすぎていたニューシネマの反動からか、もっとスウィートで柔らかいキャラが多い。でもそれは保守化というよりも、女性が自分の仕事と信念を持つことがアメリカ社会において当たり前のことになったからと捉えるべきだろう。ロマコメの復活も'80年代映画の特徴だけど、『ワーキング・ガール』 ('88年)のメラニー・グリフィスも、『恋人たちの予感』('89年)のメグ・ライアンも昔のロマコメみたいに自分を包んでくれる相手を欲しているわけではない。ただひたすら愛し合える存在を求めているだけなのだ。なんてナチュラル! '80年代ガールはファッションとは正反対に自然体だったのだ。
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『エンドレス・ラブ』('81)
世間では「切ない初恋物語」と思われている本作だが、実はブルックと引き離された男子が、彼女会いたさに家に放火してしまうなど、ありえない展開満載の怪作だ。
文・選 長谷川町蔵(文筆家)
Photo: AFLO、GETTY IMAGES
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長谷川町蔵
文筆家。'90年代末からライターとして活動。映画、音楽、文学などに関して幅広く執筆し、特にアメリカのポップカルチャーを得意分野とする。著書は、『21世紀アメリカの喜劇 人』『ヤング・アダルトU.S.A.』など。最新作は小説『あたしたちの未来はきっと』。 -
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