英国のケン・ローチ親子にも注目
息子が父の後を継いだ監督といえば、英国の社会派の雄ケン・ローチも忘れてはいけないだろう。『麦の穂をゆらす風』(06年)でカンヌ映画祭パルム・ドールを受賞しているが、去年のカンヌのコンペに出品された『天使の分け前』でも審査員賞を受賞している巨匠である。
トラブルばかり起こしている青年ロビーが、ガールフレンドの妊娠をきっかけに、更生を決意。ウィスキーづくりを通して、新しい人生を切り開いていくというハートフルなヒューマンドラマだ。インテリながら、労働者階級を擁護する「戦う映画監督」の姿勢を貫いてきた硬派のローチだが、この映画における温かみのある視点は、円熟期の到来を感じさせるものだ。
そんなローチの息子、ジム・ローチの初監督作品は『オレンジと太陽』だ。イギリスで1970年まで行われてきた「児童移民」を明らかにしたマーガレット・ハンフリーズの『からのゆりかご 大英帝国の迷い子たち』を原作とする社会派ドラマ。こちらも血は争えないというか、同じ路線を歩んでいるようだ。
子供は親の背中を見て育つというが、ひとり立ちした息子たちの今後の成長ぶりが楽しみだ。
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『天使の分け前』
監督/ケン・ローチ
出演/ポール・ブラニガン、ジョン・ヘンショー
配給/ロングライド
公式サイト/http://tenshi-wakemae.jp/
2013年4月13日(土)より、銀座テアトルシネマほか全国順次ロードショー
(C)Sixteen Films, Why Not Productions, Wild Bunch, Les Films du Fleuve, Urania Pictures, France 2 Cinema, British Film Institute MMXII -
『オレンジと太陽』
2012年 DVD発売中 ¥4,935
監督/ジム・ローチ
出演/エミリー・ワトソン、デヴィッド・ウェナム
発売元・販売元/角川書店
(c) Sixteen Midlands (Oranges) Limited/See-Saw (Oranges) Pty Ltd/Screen Australia/Screen NSW/South Australian Film Corporation 2010
text : Atsuko Tatsuta