特集 2016/2/25(木)
空飛ぶソムリエールのワイン・ダイアリー from Finland/HANA

ヘルシンキ発の“自然派”ノルディックフードをワインとペアリング

連載「空飛ぶソムリエールのワイン・ダイアリー」では、各国エアラインのソムリエ資格を持つキャビンアテンダントたちが、ご当地ワイン事情をレポート! 今回は、フィンランドの首都ヘルシンキへの直行便を担当するフィンエアーのHANAさんが地元っ子たちがこぞって集まる隠れ家スポットをご紹介。観光客が集まるエリアから少し離れるだけで、ぐっとおしゃれでグルメな店があるそう♪

フィンランドは北極圏に位置し、澄んだ水、新鮮な空気、豊かな土壌に恵まれています。とくに緯度の高いラップランド地方では、夏は太陽が沈まない「白夜」、冬は一日中真っ暗な「極夜」があり、自然環境がとても特徴的。ぶどうこそ作れませんが、夏の間に太陽の光をさんさんと浴びたベリーはとても甘く、栄養価も非常に高いそうです。そんなフィンランドには「自然享受権」といって、誰でも森に自由に入ってベリーやきのこ、ハーブなどを採取できる権利があります。大自然の豊かな恵みに囲まれて育つフィンランド人ですから、食に関しては「おいしい」だけでなく、「ピュアで健康志向」であることにこだわりを持っています。スーパーの野菜や果物売り場にもオーガニック食品が多く並び、ビーガンやローフード、グルテンフリーの食品もよりどりみどり。実はCAの間でも「食」の話題は頻繁に上がり、日本へのフライトでは豆腐や梅干し、日本茶など、ステイ中にレストランで楽しんだり、お土産に買って帰るというのが現地クルーのお約束です。そんな「ヘルスコンシャス」なフィンランド人に愛される店って、どんな店だか気になりませんか?
 
まず一軒目に紹介したいのは、ヘルシンキ中央駅から徒歩5分ほどの場所にある「ソコスホテル トルニ」のすぐ側にあるレストラン「SINNE HELSINKI(シンネ ヘルシンキ)」。オーナー兼ワインディレクターであるラウリさんが1年前にオープンした“Let food -be thy- Medicine”(医食同源)がテーマの店です。

料理は、スパイスを多用せず、ハーブなどで素材の味を活かす北欧のクラシックな調理法で提供しています。フルーツや野菜は、ラウリさんの自家栽培の畑から収穫したものを使い、肉は小規模の農場からオーガニックミートを仕入れているそう。
店内は、デリエリアとガーデンエリアの2スペースに分かれています。デリは11時~夜10時までの通し営業、ガーデンはディナータイムの17時からオープン。とくにガーデンの方は、ガラス天井から自然光が入り、専属ガーデナーを雇って手入れされたグリーンが配され、まるで森の中にいるような心地よさ! インテリアも、ラウリさんの友人によるウォールペイントや学校で使われていたヴィンテージチェアなど、手作りの温かみとハイセンスな装飾で、とてもフィンランドらしい空間です。デリの方では、ランチ利用はもちろん、豊富なチーズセレクションと一緒にアペロ利用がおすすめ。17時以降(土曜は13時以降)であれば、こちらのスペースでもコースやアラカルトの注文が可能だそうです。

店に入ってまず驚くのは、素晴らしいワインのセレクションです。
「小さな生産者やアルティザンワインなどを中心に、個性あふれる珍しいワインを紹介したい」と、ラウリさん。ヘッドソムリエであるエドモンドさんとともに、ヨーロッパワインを350種ほど選び、常にラインナップしているそうです。そのため、ワインリストは、まるで辞書のよう! 空前の“泡”ブームがきているというフィンランドのワインラヴァーたちのために、シャンパーニュやスパークリングワインだけで80種以上も揃えているのは驚きです。また最近のヨーロッパ経済の事情から、カジュアルなワインを選ぶゲストが多いことを考慮して、通常ボトル原価の3~4倍ほどが提供価格になるところ、この店では原価+30ユーロに統一して提供しています。スタッフの知識も豊富で、珍しいワインを探したい人にとっても楽しめる店ではないでしょうか。
さて、私がまずお願いしたのは「チーズセレクション」(12ユーロ)。その時に仕入れられたチーズメニューのなかから、おすすめや好みのチーズをおまかせで盛ってくれます。この日はゴーダチーズ、食用炭に覆われたゴートチーズ、ロックフォール(ブルーチーズ)、ライ麦のクラッカー、ピーナツの入った自家製パン、ベリージャム、ハンターハニー(野生のセージやタイムなど森のハーブが含まれたはちみつ)が一皿に。チーズに合わせて選んだワインは、開店当初から店に置いている定番のロゼワイン「CLETO CHIARLI Brut de Noir Rose(クレト キアリ ブリュット デ ノワール ロゼ)」(12cl=120cc/9ユーロ)。しっかりとしたストロベリーやラズベリーの香りとデリケートで丸みのあるイタリア産の微発泡ロゼです。それと、写真下の「X-BERG Riesling(エックスベルグ リースリング)」(12cl/8.40ユーロ)。こちらは、ラウリさんがスウェーデンのレストランで働いていた時代に出会った友人、マルクス・ルンデン氏が個人で作るワインです。マルクスさんはラインガウ地方にある世界最高の栽培・醸造学研究機関のひとつ、ガイゼンハイム大学で学んだ後、大手のワイン生産会社で責任者を務めながら、自分のブランドも持ちたいと考え、このワインを作ったのだそう。「X-BERG」はフィンランド向けに生産されたブランド。シトラスを思わせるフレッシュでフルーティな香りと心地よい酸味のある辛口の白ワインで、まさにこの地に来ないと巡り会えないワインだと思います。
どちらも、個性的な味わいのチーズの塩気とジャムなどの甘みと見事にペアリングしてくれるワインでした。

ラウリさんによると、ソムリエやワイン知識が豊富なスタッフがいる店では、ゲストたちが料理ごとにワインペアリングしてもらうコースを楽しむ人が多いといいます。この店では、6種類の料理(65ユーロ)にワインペアリング(55ユーロ)、または、3種類の料理(46ユーロ)にワインペアリング(29ユーロ)の2コースを用意。コースメニューは2週間おきに、アラカルトは年に6回に変更していて、ベジタリアンにも対応。ペアリングする際は、「ワインが料理の味を消さない。あくまでも料理が主役になるように」気を付けて選んでいるそう。珍しいアルティザンワインを料理にあわせて、グラスでいろいろいただけるのは、またとないチャンス! 
 
こちらが、コースで出される料理とワインの例。季節によって、仕入れる食材がかわるので、行くたびにメニューが変わるのもうれしい。

写真左は、「白身魚のシュガーソルトカードとカワメンタイの卵 サワーミルクソース」。ワインは、ドイツ・モーゼル地方の「Knewitz Riesling Trocken 2014(クネヴィッツ リースリング トロッケン)」。24歳という若さでワイン生産をするトビアス・クネヴィッツ氏による手作りワインです。ラインラント=プファルツ州・マインツにあるアッペンハイム地区で、白亜質の土壌を活かして作られるリースリングはフレッシュなハーブと花の香りがする柔らかな酸が素敵。こちらは、オーナーが直輸入しているもの。写真右は、「カワカマスのローフと帆立、ムール貝、蛸 スパイシートマトソース」。合わせるワインは、イタリア・シシリア島の「COS Pithos Rosso 2014(コス ピトス ロッソ)」。島の南東、ビットリアのぶどう畑で共に育ったという3人の友人同士で始めたワイナリーからの1本。シシリア原産のぶどう品種ネロダーヴォラとフラッパートを粘土のアンフォラに入れ、土の中で寝かせて醸造するビオディナミワインです。自然が凝縮されたエレガントでフレッシュな赤。こちらもラウリさんが直輸入しているそう。この店には専属の釣り師がいるというほど、鮮度の高い魚を使った料理も自慢。魚料理に赤ワインを合わせたりするところもオープンマインドなフィンランド人の面白さですよね! 
 
ちなみに店内にあるショップも要チェック。「シンネ」オリジナルの食品やグッズ、ラウリさんの友人たちのブランドによる手作りの瓶詰フードなどが並びます。たとえばフィンランドならではの果物「トゥルニ」入りのはちみつ(8ユーロ)やワインビネガー(各8ユーロ)、店のロゴがあしらわれたオリジナルエコバッグ(3ユーロ)など。おしゃれなルックスで、ここでしか手に入らないお土産もゲットできるのでおすすめ。 

個性的でストーリーのあるワインと、ヘルシーでピュアなモダンノルディック料理との素晴らしいひとときは、この店でこそ楽しめるオンリーワンな体験になるはず。ランチやアペロといったカジュアルな利用から、特別な日のディナーまで、グルメなフィンランドっ子のお気に入りモダンビストロ「シンネ」で、とっておきのワイン・タイムを過ごしてみて。
  
>>次ページでは、フィンランドでいま一番ホットな場所にある隠れ家的ワインバーを紹介! 

  • HANA●フィンエアー客室乗務員
    日本(東京、大阪、名古屋、2016年5月から福岡就航)とヨーロッパを最短最速でつなぐフィンエアーでヘルシンキ便を担当する、空飛ぶソムリエールの一人。今まで訪れた国は4大陸35カ国175都市。自然派のワインや食に興味を持ち、2014年に日本ソムリエ協会ソムリエ呼称資格を取得。世界での食べ歩き、おいしいワインを探し求める旅はまだまだ続きます。

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  • 「SINNE HELSINKI」
    Eerikinkatu 2, 00100 Helsinki
    tel. 010-3228-147
    営業時間/11:00~00:00(ガーデンは、~14:00、17:00~00:00)、土曜は13:00~(ガーデンは17:00~いづれも22:00L.O.)
    定休日/日曜、月曜
    http://www.sinnehelsinki.fi/en/
     
    「KOMBO WINEBAR & KITCHEN」
    Kulmavuorenkatu 2, 00500 Helsinki
    営業時間/17:00~00:00
    定休日/日曜、月曜、火曜
    問い合わせ先/kombowinebar@gmail.com
    http://www.kombowinebar.fi
    *予約はEメールかfacebookメッセージで。日曜はワインテイスティングイベントを開催することもあり。

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