悪条件が重なったカートとの撮影
E:当初の予定だと、どう撮ろうと思っていたの?
J:僕がその当時好きだった初期のロック写真のような、ミュージシャンと自然を対比させる感じに撮ろうと考えていた。セントラルパークの大きい石の前にメンバーを立たせて、ポーズも特に決めずナチュラルな感じで、広角レンズで撮るはずだった。あとはNYのストリートやホテルの部屋でカジュアルに撮ろうとも考えていたけれど、どれも実現しなかったね。限られた時間で、さらに当初と違うロケーション。こんな悪条件だったけれど、与えられた条件のなかで最善を尽くさないといけないって強く思ったんだ。プレッシャーに負けずにそれをコントロールできるのもフォトグラファーの能力のひとつだから。
E:そんな悪条件でカートとはどうコミュニケーションをとったの?
J:僕はどの撮影も被写体とのコラボレーションだと思ってるよ。フォトグラファーの大切な要素がコミュニケーション能力。自分が欲しい絵になるように、被写体にどう仕向けられるかという技術。ときには心理学者風、父親風、仲のよい友人風、そんなふうに被写体によって、方法を変えながら、被写体の心を感じ取って、カメラを操る。カートの場合は、言葉数は少なかったけれど、一緒にいても自然で気を遣わない感じだった。彼に会ったのはその日がはじめてだったけれど、言葉をあまり交わさなくても成立する相手だったんだと思う。撮影現場にいるのはカートとバンドメンバー、僕と僕のアシスタントだけ。例え撮影時間が限られていたとしても、僕はカートをリラックスさせたかったから、焦らずにゆっくり静かにコミュニケーションをした。撮影しているということを忘れて、僕とただその場にいるぐらいの自然な感覚にしたかったんだ。少しはカートにこういうポーズをしてと手取り足取り指示したけど、彼はまったく嫌がらなかったよ。だから、写真の彼も自然な感じ。ちょっとリラックスしすぎぐらいかもね。
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カート ― ジェシー・フローマン
開催期間/開催中~2013年3月24日(日)
開催場所/オープニングセレモニー東京店 5F
東京都渋谷区宇田川町21-1 西武渋谷店モヴィーダ館
tel. 03-6415-6700
営業時間/月~土10:00~21:00 日・祝10:00~20:00 -
ジェシー・フローマン(Jesse Frohman)
NY在住のフォトグラファー。アーヴィング・ペンに師事。ジェームス・ブラウン、ウディ・アレン、ストロークスほか、多くのセレブリティを撮影。現在『ニューヨーク・タイムズ』やモード誌をはじめとするエディトリアルほか、「バーニーズ」「ソニー」などの広告を手掛けるなど、多岐に渡り活躍中。
http://jessefrohman.com/