キャサリン妃に古着を着させたスゴ腕スタイリスト
庶民からプリンセスへ、そしてプリンセスになってもハイストリートブランドを好んで着用、着用ブランドが知れるや否や即完売、と世界経済をも回す女性、キャサリン妃。そんな彼女の「秘密兵器」とも言える女性が2014年に彼女のパーソナルアシスタントからスタイリストへと昇進したナターシャ・アーチャー、通称“タッシュ”だ。キャサリン妃の彼女への信頼ぶりは厚く、ジョージ王子出産後に病院にかけついた家族以外の最初の民間人のひとりがタッシュその人である。
名門パブリックスクールからキングス・カレッジに進学、2007年から王室に勤務するナターシャ・アーチャーは29歳。最近婚約したお相手は大手写真通信社の王室専属フォトグラファー、クリス・ジャクソン・ゲッティ。いわば職場結婚なのか、これまたメディア戦略なのか……とにかく政治的能力もスゴ腕。
それはそうとして彼女の手腕は称賛に値する。まず、女王からお叱りを受けない程度に衣装を王室にふさわしい形にお直しする能力。それにはまず王室、そしてロイヤルな社交のマナーを徹底的に頭に叩き込む必要がある。エリザベス女王が懇意にしているドレスメーカー、スチュワート・パルヴィンも絶賛している。そして、経済感覚。キャサリン妃の年間衣装代は約3500ポンド、日本円にして約460万円をやりくりしないといけない。この額は彼女が及ぼす経済効果を考えれば、ファッション市場という大海に注がれるささやかな一滴の水にしかないとスチュワートは考えているが、ナターシャはこの現実に向き合うしかない。そこで、「M・ミッソーニ」のコートドレス(写真)などはなんと中古ショップで購入し、それもさらにお直しして着るなど徹底している。キャサリン妃のスタイルをただ単に“王室的に正しい”ではなく、“モード的にもイケてる”スタイルに仕上げたことで、デザイナーに「お代は結構です」と進んで言わせることにも成功した。たとえばニュージーランド出身のデザイナー、レベッカ・テイラーなどはキャサリン妃が自身のブランドをまとっていることを知るや否や、衣装代の請求をやめ、彼女の写真をアトリエ中に飾って喜んでいるほどだ。
Text : Ryoko Tsukada