「プランタン」のADに聞く! パリと女性に欠かせない“エレガンス”とは
パリの老舗デパート、プランタンが今年で祝150周年! 創業時から大事にしてきたのは、パリの女性のファッションと切っても切れない関係だという“エレガンス”。長年ウィンドウや広告、カタログなどすべてのクリエイティブを担当しているアートディレクター、フランク・バンシェ氏に、そのエレガンスの真髄を聞いた。これを読めば、明日からまた少しパリジェンヌに近づけるかも!? 貴重な広告ビジュアルで見る女性のファッション遍歴も必見。
名ビジュアルに見る、パリと女性が歩んだファッションヒストリー
ここではこれまでのプランタンの代表的な広告ビジュアルを見返しながら、パリと女性が歩んできたファッションヒストリーを、フランクの解説とともにプレイバック。
【1895年のポスター】「19世紀のエレガンスを代表するサビリエ(砂時計)のシルエットが見てとれます。細く細くウエストを締め、胸や腰の豊かさを強調するドレスですね。当時のモードやおしゃれの目的は、“良き伴侶を見つけるため”に限られていたといえます。その女性らしさを強調するシルエットでした」
続く1910年代は、エレガンスの歴史のなかでも、まさに気品に溢れた時代。それまでの服飾概念を“変える”ことが意識され、発展を遂げ始める。「長かったドレスの丈も、くるぶしが出るほどに短くなった。女性の美、女性の身体のナチュラルな美しさを見出すスタイルの歴史の始まりですね」
【1920年代後半のポスター】1920年を代表するアール・デコスタイル。女性の社会進出が始まり、動きやすい活発な服へと大きく変化。くびれのない直線的なシルエットのドレス、ひざ丈スカート、ショートカットヘアにクロッシェ帽が定番。日本でもこれに影響を受けたモダンガールが登場した。
【1930年代のポスター】「シンプルなアリュールに溢れたスタイル。これまで締め付けていたウエストのスタイルから女性を解放しただけでなく、シンプルなシルエットだからこそ、カットの緻密さ、ソフィスティケートされたディテールが際立つ。前世紀の女性に課されていた肌の白さや、女らしさといったものから解放された自由が見えます。浜辺での海水浴もトレンディになった時代です」
1950年代のポスターではウエストを締め、スカートはふっくら広がるシルエットが際立つ。1960年代はアヴァンギャルドのひと言で、ピエール・カルダンを招き、時代に先駆けて限定コレクションを発表。「プレタ・ポルテ時代の到来、それはモードのデモクラシーであり、同時にパリのトレンドを届けるエレガンスのデモクラシーでもありました」。1980年代にはさらに女性像が進化。「好戦的とも言える女性の強さ、エネルギーに溢れています。スポーティブで大胆でセクシー。ボクサーパンツ、ウルトラビッグなシャツなど、男性との対等性を表現するスタイルでした」
最後のポスターは現ADのフランクが手がけた2015年の広告。アーカイブからプランタンのDNAを汲み取り、昔のポスターの一部と現代の女性を重ね、今のエレガンスを表現した。「いかがでしたか? 歴史のビジュアルからも分かるように、プランタンはいつも女性のエレガンスを牽引する先駆者を担ってきたんですよ」と話すフランク。フォントや構図のデザインの変遷も感じられて、興味深さ満点! そのほかのポスターも魅力的なものばかりなので、日本での巡回展示に期待したい。
photo:©Printemps interview & text: Chiyo Sagae
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PROFILE
Frank Banchet(フランク・バンシェ) /
プランタンのクリエイティブ・ディレクター。ボン・マルシェのプロジェクトマネージャーとしてウィンドウディスプレイやメンズファッションのマーチャンダイズ経験を経て、1995年にプランタンに入社。ウィンドウディスプレイをはじめ全ビジュアルを指揮。2008年より現職。PRINTEMPS HAUSSMANN
64, BD HAUSSMANN
75009 PARIS – FRANCE
tel. +33 (0) 1 42 82 44 39 -
エキシビション「パリのエレガンス」
プランタン創業150周年を祝して、2015年10月9日(金)~20日(火)の期間、パレ・ロワイヤル広場にて、創業理念のひとつであるテーマ「すべてのエレガントな女性はプランタンのお客様」にちなんだ展示「パリのアーカイブ150年」を開催。ファッション会の変遷、大きな社会改革、女性の自由、各時代の著名な写真家とのコラボレーションなどを通して、1865年から今日に至るまでのエレガンスの変化を振り返る。
会期/2015年10月9日(金)~10月20日(火)
会場/パレ・ロワイヤル広場