ベネディクト・カンバーバッチが語る仕事と女性
ベネディクト・カンバーバッチが2015年のオスカー主演男優賞候補に選ばれた、映画『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』が、日本でも驚異的な初週動員数を記録。評価サイト「ロッテントマト」でも90%が満足という結果に。私生活でも友人のキーラ・ナイトレイとの男女を超えた友情も注目の本作品を撮影中に彼が見つけた、仕事に大切なこととは? ワーキングガールに刺さる内容のインタビューをお届け!
シリアスな状況からユーモアを引き出す
―あなたが演じた天才数学者、アラン・チューリングは苦悩に満ちた人生であるため、とてもシリアスに演じなければいけないなか、現場で何かほっとするような面白いエピソードがあったら教えてもらえますか?
そうだねぇ、共演のみんなと一緒に(劇中でもキーアイテムとなる)クロスワードパズルはよくしてた。誰も上手じゃないのに! みんな絶望的にヘタでね(笑)。 あと、監督のモルテンはノルウェーの人で、英語はもちろん堪能なんだけれど、コーヒーを飲むと、なんていうか……不明瞭になって(笑)。子音の滑舌が悪くなって全部が母音に聞こえてしまうんだよね。で、大抵彼は朝イチでコーヒーを飲む。だから撮影の最初から「オアイウエェ×●△※■☆ワァワァワァ」みたいになる。スクリプト・スーパーバイザー(監督のサポートをする記録係)が彼の言葉を通訳してくれない限り、全然何を言っているのかわからない状態になってしまって。それをあとでモノマネをするんだ。みんなでね。楽しかった(笑) あとは同じ世代が多かったことも楽しめた理由かな。
そうだ、「仕事を楽しむ」っていうことが今回の作品を通じて大切だということがわかったかもしれない。ものすごくシリアスな内容だったからこそ、演技がちゃんとうまくできると、余計に「よかった~」と思えたというのもあるけど、この脚本自体がとてもユーモアがあるものでしょ? たとえば冒頭の面接を受けるシーンがかなりおかしいよね。だって、仕事の面接に来ているのに、あのデカくて横柄な態度はないでしょ(笑)。しかも、表面上は温和な話し方をしているから、面接する側としては傲慢に見えて余計に腹が立つ。でも、彼はとても真剣に話をしているだけ。そんなユーモアにあふれるシーンがたくさんあって、それを演じるには、楽しんでいないとね。
心が沈むようなストーリーだからこそ、僕たちはそこから感動的なものと同時にユーモアも引き出して、和気あいあいと過ごせた。だからこの素晴らしい作品ができたんだと思う。
―アラン・チューリングの成功は、ジョーン・クラークという女性を性別ではなく、能力で仲間として抜擢することで始まります。現代の男性が女性の能力を活かすためにすべきこととはなんでしょう?
やはりその人の資質を見極め、責任も尊敬も与えることだよね。「(女性が男性と)同等な扱いを受けるべき」と考えることは基本だと考えているよ。
―それはわかっていても、実行できる男性は少ない。彼らを阻んでいるのは何でしょう?
ひとつは長年社会のなかで育ってしまった“慣習”が原因だと思う。長年性差別はあったわけで、それが続いているだけなんだよね。
>>次のページでは盟友にして名優、キーラ・ナイトレイへの思いを告白。
-
『イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密』
1939年、ヒトラー率いるドイツに宣戦布告し第二次世界大戦に突入した英国。英国を苦しめたのは、難攻不落と言われた159,000,000,000,000,000,000(1垓5900京)通りのパターンをもつドイツ軍の暗号“エニグマ”。10人の人間が寝ずに働き続けても解読するまでに2000万年かかるというもの。それを解読し、英国を勝利に導き、その後のコンピューターの祖となるマシーンを生み出した、まさにマシーンのような天才、アラン・チューリングが仲間との人間的な関係を築き上げていく過程と、秘められた恋、そして悲劇的な最後に至るまでを忠実に描いた話題作。
監督/モルテン・ティルドゥム
出演/ベネディクト・カンバーバッチ、キーラ・ナイトレイ、マシュー・グード『マッチポイント』『シングルマン』、アレン・リーチ「ダウントン・アビー」、マーク・ストロング『ゼロ・ダーク・サーティ』『シャーロック・ホームズ』、チャールズ・ダンス「ゲーム・オブ・スローンズ」『エイリアン3』
配給/ギャガ
公式サイト/http://imitationgame.gaga.ne.jp/
TOHOシネマズ みゆき座ほか全国公開中