特集 2018/1/8(月)

【全文公開】オプラ・ウィンフリーが第75回ゴールデングローブ賞で3回称賛されたスピーチ

2017年セクハラ事件を発端にあらゆる膿が出てきたハリウッド、そしてアメリカ。ハリウッドがこの難局を乗り越えるかに注目が集まった第75回ゴールデングローブ賞で、功労賞であるセシル・B・デミル賞を黒人女性として初めて受け取ったのは女優、司会者でありジャーナリストでもあるオプラ・ウィンフリー。彼女が計3回スタンディング・オベーションを受けたスピーチで語ったこととは? 全文を公開!

1956年、逮捕され指紋を取られるローザ・パークス

Photo: Getty Images

この物語はただ単に、エンターテインメント業界だけに影響を及ぼしている話ではありません。文化、場所、人種、宗教、政治、あるいは職場など、あらゆるものを超越する物語です。ですから、私は今夜、たとえば私の母のように、養うべき子供たちがおり、支払わねばならない請求書があって、そして追及すべき夢があるというだけで、何年も何年も虐待と暴行を耐え忍ばざるを得なかったすべての女性たちに感謝を捧げたいと思います。私たちがその名を知ることのない女性たちはたくさんいるのです。家事や農業に勤しむ女性たち、工場で働き、レストランで働き、そして学術、エンジニアリング、医学、そして科学の分野で働く女性たち。彼女たちはテクノロジー、政治、そしてビジネスの世界を形作っています。彼女たちはオリンピックに挑むアスリートでもあり、私たちの軍に加わる兵士たちです。
 
他にもあります。リーシー・テイラー。私も名前を知っていますし、皆さんにも是非知っていただきたいのです。1944年、若き主婦であり母であったリーシー・テイラーは、アラバマ州アビヴィルで、教会から歩いて帰る途中、6人の武装した白人男性たちに捕らわれ、レイプされ、目隠しされたまま、その教会から家へと続く道に打ち捨てられました。彼女は男たちから誰かに話したら殺すと脅されていましたが、彼女の物語は、当時ローザ・パークス(注4)という名の若い女性が働いていた全米黒人地位向上協会に報告され、ローザ・パークスが主導してこの事件を捜査し、一緒に司法による正義を追い求めました。ですが、ジム・クロウ法(注5)がまだ有効だったこの時代、司法による正義は選択肢になかったのです。彼女を踏みにじろうと目論んだ男たちが罪に問われることはついにありませんでした。リーシー・テイラーはほんの10日ほど前、98歳の誕生日の直前にこの世を去りました。彼女は私たちが生きてきたのと同じ年月を生き抜きました。あまりにも長い間、力を持つ男性たちに残酷なまでに打ちくだかれた年月を。そういった男性たちの力に対し、女性たちが勇気を出して真実を語っても、誰にも聞いてもらえず、信じてももらえない。そんな時代があまりにも長く続きました。ですが、そんな時代はもう終わりです。タイムズアップ! 彼らの時間はもう十分なのです。(スタンディング・オベーション)

彼らの時代が終われば、私はただこう思うのです――ーリーシー・テイラーが彼女の真実を知りつつその命を終えたのだと。他のたくさんの女性たちの真実のように、苦痛に苛まれ続けたここ数年、そして今でももがき苦しみながら、この世を去った女性たちがいたのだと。ローザ・パークスは心のうちにリーシー・テイラーの真実を11年間胸に抱え続け、そしてある朝、モンゴメリーのバスで座り続けることを決めたのです。そしてその真実は、ここにいる「MeToo(私も)」と言うことを選んだすべての女性たち、そしてすべての男性たち、聞くことを選んだ男性たちのうちにあるのだと。

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Text: Ryoko Tsukada Photo: Getty Images

  • 注1:当時オプラは10歳。既に身内や知人から性的虐待を受け始めていた
    注2:黒人男性初のオスカー受賞者
    注3:オプラが1980年代に司会を務めたTVシリーズ
    注4:米公民権運動活動家。法律に背き、バスの席を譲らなかったことで逮捕された。
    注5:アメリカで存在した“純白人”以外すべての有色人種を差別する法律。顔を黒く塗って白人が黒人を演じた“ミンストレル・ショー”で歌われたヒット曲「Jump Jim Crow」にその名を由来する。
    注6:実際の発音は「エイメン」。映画『野のユリ』で主人公は南部バプテスト教会のキリスト教徒としてあえて「エイメン」を強調している。(2018.01.08追記)

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