『美女と野獣』のガストン、オープンリーゲイとしてハリウッドで活躍する
ロンドンのウエスト・エンドでキャリアをスタートさせ、ハリウッド進出後まもない2002年に既にカムアウトを果たしているルーク・エヴァンズ。現在はダイバーシティを本格的に意識した作品実写版『美女と野獣』のガストン役で全世界の老若男女のハートを鷲掴み中。そんな彼が語る、オープンリーゲイとしてハリウッドで活躍する実態とは?
「なかなか答えるのが難しい質問だな。あなたが称するところの『ハリウッド』がどんなものなのかによると思うよ。僕自身はそれについては考えないんだ。僕自身は才能と成功、それと私生活で何をしているかどうかは直結しないと思っているし、そういった要素が直接作用しあうこともないように思うんだ。もし自分の私生活のせいで自分が採用されなかったと感じるようなことがあれば、この業界にはいられないと思っている」。
自身のアイデンティティのために仕事が得られないのならば、潔くハリウッドを去るーオープンリーゲイとしてこれ以上の決意表明はないだろう。
『美女と野獣』以前、既にイギリス出身俳優としてブロックバスター入りしていたルーク。ベネディクト・カンバーバッチやトム・ヒドルストンほど優等生的なイメージでもなく(実際、ルークは労働階級出身)、トム・ハーディーほどワイルドすぎるイメージもない。マイナーなイメージを保ってきたからこそ、逆に広範囲な役柄を責めるブロックバスター俳優へとたった7年半で上り詰めてきたのだ。
『美女と野獣』でマスに対するアプローチとダイバーシティのメッセンジャー役を堂々とつとめあげ、それが受け入れられている以上、「自身のセクシュアリティのために役柄が得られないならばハリウッドを去る」という彼の決意表明が果たす役割は大きい。
ちなみに、『グラマー』誌による2017年版「世界で最もセクシーな男性100人」において、ルークは堂々の5位とトップ10入り。同じく8位にオープンリーゲイであるマット・ボマー、80位にウェントワース・ミラーがランクインを果たしている。現状では恐らく、ハリウッドのお偉方やキャスティングディレクターたちよりも一般の人たちのほうが遥かにダイバーシティを受け入れる姿勢では先を行っているのではないだろうか。
ルークと同じく、私生活でその人が何者であろうと関係ない。あるいは、自身の仕事に自信を持ち、私生活ではオープンリーゲイとして誇り高く生きる姿こそがかっこいいという共感も与えることができる彼らは、男女双方のターゲットを確実に得ることができる費用対効果の高い才能たちなのではないだろうか。そこを考えるかどうかでこれからのマス向けコンテンツの制作の肝が決まってくるのではないだろうか。
自身のアイデンティティが認められない場からは潔く去る。そんな力強いメッセージを伝えるルークのこれからを応援したい。
Text : Ryoko Tsukada
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Photo : Getty Images