演技派ふたりによる夫婦バトルも見もの

実話を元にするのは、“アメリカ映画史上最低”といわれる映画監督をジョニー・デップが演じた『エド・ウッド』以来だが、『ビッグ・アイズ』に登場する濃いキャラクターやフィクションを遥かに凌ぐ奇想天外な物語は、いかにもバートン監督好みだ。
 
この物語の面白さは、単に“事件”の奇異性だけでなく、一枚の絵がいかにして“名画”に仕立て上げられ、口先だけの男が“偉大なる画家”となってしまうのか。ムーブメントに流されやすい人間の本質を風刺している点だ。また、もう一方で、内気なマーガレットが夫の脅迫により、なぜ10年にも及ぶ歳月、虐げられた状態で絵を描き続けねばならなかったのか。家庭内暴力に通じる夫婦間のパワーバランスなど、現代的なモチーフが層をなしている点も興味深い。
 
夫ウォルター役を演じたのは、『イングロリアス・バスターズ』、『ジャンゴ 繋がれざる者』でアカデミー賞を受賞したクリストフ・ヴァルツ。妻マーガレットを演じているのは、アカデミー賞5度ノミネートを誇るエイミー・アダムス。目下、ゴールデン・グローブ賞にノミネートされているふたりだが、演技派による夫婦バトルはかなりの見応えがある。