ネパールの国民的定食は、ダル（豆のスープ）とバート（ご飯）に野菜などを煮込んだおかず、ピリっと辛い漬物で構成されるダルバート。祭りや冠婚葬祭以外は、毎日これ。インドと中国に挟まれたネパールでは、両国で使われる香辛料が絶妙なバランスで顔をのぞかせる。ネパールの小物がセンスよく配されたこの店では、店内の雰囲気同様、料理はどれもオシャレで繊細。日本人の舌に合うようにと強烈な香りのするスパイスはさけているものの、スパイス使いや辛さは本場さながら。ダルバートはオーナーのパダムさんのお母さんの味をしっかりと再現しているという。お米も故郷の味に似ているからと、意外にもあきたこまちを使用。新鮮な野菜をたっぷり使い、油は控えめ。いたずらにスパイスを多用することなく、シンプルかつ透明感のある味に仕上げるのが身上だ。口にすれば、マイルドな口当たりの後からじんわりと優しいコクがおしよせ、食べるほどに不思議と後をひく。辛さが足りなかったら卓上にある自家製の唐辛子ペーストを。ダルバートは、いわばよくばりカレーセット。カレーライスに慣れ親しんだ日本人にとっては見逃せない逸品だ。