特集 2015/10/5(月)
世界のおやつ from Bologna / Mari

270年の歴史を持つイタリア・レッチェ県の伝統菓子「パスティッチョット」

日本と同じように南北に長いイタリア。様々な気候や文化が存在し、お料理やドルチェも各地に根付いたものが盛りだくさん。今回は、日本ではまだあまり知られていない南イタリアへ皆さんを誘います! イタリアをブーツにたとえるならば踵にあたるプーリア州、その中でも一番南のサレント半島に位置するLecce(レッチェ)県の伝統的なドルチェをご紹介します。

住所を頼りに道を進み、バロック調のガラティーナの母教会Chiesa dei Santi Pietro e Paolo(聖ピエトロとパオロ教会)を超えると、ふわ~ん、と甘い香りが漂ってきました。「うん、もうすぐ、もうすぐ!」 そして、目指した住所で目に入ったのは……「ここがパスティッチェリアなのかな?」と一瞬躊躇してしまうような外観で、間口が一軒半ほどの店。

半信半疑のまま中に足を一歩踏み入れてみても、ショーケースにドルチェがいっぱい並べられているわけでもなく、パスティッチョット片手におしゃべりを楽しんでいる人もなく……。と、全く想像していたような菓子店の雰囲気ではありません。そんな店内のカウンターの後ろにはシニョーラ(Signora:奥様)が一人。

ひっきりなしにかかってくる電話に「ごめんなさい。今、注文が殺到していて、すぐにはお分けできないのです。11時半まで待っていただければ、次回焼きあがるものがあります。いかがなさいますか?」と応答し、来店者には「○時にご予約の○○様ですね」と対応。その状況で「予約がないと買えないようだな……」ということがわかりつつ、ダメもとでシニョーラに「パスティッチョットを買いたいのですが、予約がないとダメでしょうか?」と伝えると「ごめんなさい。そうなんです。聞いていただいていてお分かりのように、生産が間に合わず……。11時半でよろしければ準備できますが……」と。しかし「次の予定があり、かくかくしかじかで」とこちらの状況をお伝えすると「ちょっとお待ちください」とのお言葉が。待つこと数分。その間もシニョーラはお客様の対応に追われています。
 
そして「ごめんなさい。ほんとにひとつしかお分けできないの。大勢の方が朝の早い時間にご希望されるからこの時間帯はご希望に沿えなくって」と言いながら特別に出してくださったのがこちらの包み紙。

「パスティッチョット」 1.4ユーロ

手に取ると包装紙の上からでも暖かさが伝わってきます。「期待できるかも!」と、思いながら開けてみたら中から出てきたのは想像していた琥珀色を超え「焦げてるのかな?」と思うような、お世辞にも「心ときめく」とは表現できない風貌のドルチェが出てきました。「これが本当に予約殺到のパスティッチョットなのか……」と、この店を訪れてから何度目かのハテナ状態になりましたが、貴重なひとつを大切に半分に割ってみると……。

サクサクっと生地は割れ、中からとろりときれいな色のクリームがとろけだしてきました! 口に入れると、ショーケースにパスティッチョットが並んでいない理由がわかります。今までまさにオーブンに入っていた温かさで、外側の生地はサクッとしており、中のクリームも口の中でとろけます。多くの人が、予約してでも食べたくなる気持ちがわかりました。

写真上:忙しい中、丁寧に対応してくださったElisa(エリーザ)さん。

パスティッチョットの賞味期限は当日(できればできたて!)です。店にあったもうひとつのドルチェ、パスティッチョットの派生版でスポンジケーキを使ったTorta Pasticciotto(トルタ・パスティッチョット)は「パスティッチョットよりも日持ちするのよ」と言っても2日以内に食べて、とのこと。そのためどちらも日本へお土産に持って帰ることはできませんが、レッチェにいらっしゃる際には予約をした上でこちらの店に足を延ばしてみてください。ちなみに、今回は先代がお亡くなりになられた直後ということでドルチェの数が限られていましたが、通常はその他にもFruttoni(フルットーニ)というパスティッチョットのクリームの代わりにジャムを入れて上にチョコレートをかけたものをはじめ多くのドルチェがあるそう。是非ぜひ色々な味を試してみたくなるお店です。

「アンドレア・アスカローネ」で格別のパスティッチョットを食べ、Leccese(レッチェーゼ:レッチェの人)になった気分で向かったガッリーポリもほかのレッチェ県の街同様にとっても素敵な街でした。レッチェは、日本から訪れるには少し遠い場所ではありますが、まだまだおいしいものや魅力的な街がたくさん。イタリア旅行を計画されていたら、ぜひ足を延ばして行ってみてください!

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  • Pasticceria Andrea Ascalone(パスティッチェリア・アンドレア・アスカローネ)
    Via Vittorio Emanuele, 17 Galatina (LE), Italia
    tel. +39-0836-566009
    営業時間/9:00~13:15 17:30~20:30 日曜は、~13:15
    定休日/月曜、日曜 午後

  • Mari●大手経営コンサルティング会社にて経営コンサルタントとして勤務後、2006年に渡伊。2人の男の子のマンマをしながら「フェリチターリア」の通訳者・翻訳者・個人旅行同行アシスタントとして、「食の都」ボローニャを中心にイタリアの魅力を発信中。
    http://www.felicitalia.net/

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