特集 2015/6/1(月)
世界のおやつ from Bologna / Mari

どのタイプがお好み? トスカーナの伝統菓子「カントゥッチ」食べ比べ!

皆さん「Cantucci(カントゥッチ)」ってご存知ですか? ご存じの方がこの質問に答えるとしたら答えはどうでしょう? 「硬くて歯が折れそうになるビスケット」や「おじいちゃん、おばあちゃんのお土産には向いてない食べ物だよね」など、そんな声が聞こえてきそうなビスケットです。でも、ちょっと待って! 今回は、これから皆さんの既成概念を覆す「カントゥッチ」をご紹介します。

今回のおやつ「カントゥッチ」は、「Cantuccini(カントゥッチ―二)」や「Biscotti di Prato(ビスコッティ・ディ・プラート)」とも呼ばれ、1600年代終わりにPisa(ピサ)で発祥したトスカーナ地方の伝統菓子。小麦粉、砂糖、卵白で作られていましたが、現在ではアーモンドを加えたものがクラッシックな味として定着しており、トスカーナでは食後のデザートとしてVin Santo(ヴィン・サント)という甘いワインに浸しながら食べられています。)」ボローニャの菓子店でも「カントゥッチ」は売られていますが、イタリア語で一般的にビスケットを意味する「Biscotto(ビスコット)」(「ビス」は「2回」、「コット」は「焼く」という意味)という名の通り、2回焼いて水分を蒸発させているため、非常に硬いのです。しかし何やらフィレンツェには「柔らかいカントゥッチ」や「食べたことのないほどおいしいカントゥッチ」と言われている店があると聞きました。そこで、どんな「カントゥッチ」なのか知りたい! 食べたい! ということで、電車に飛び乗りフィレンツェへ。高速列車に揺られること35分、「花の都フィレンツェ」に行ってきました。
 
まず向かったのは、駅から数分のところに位置するカントゥッチ店「Il Cantuccio di San Lorenzo(イル・カントゥッチョ・ディ・サン・ロレンツォ)」。

オーナーのAleandro(アレアンドロ)さん(写真右)が、2010年にオープンしたこちらの店は、カントゥッチはもちろん、ケーキや菓子パンなども販売し、地元の人々に愛される有名店。1938年から1975年まで代々パン・菓子屋を営んできたアレアンドロさんの両親からレシピを受け継ぎ、開業後すぐに大人気店に! オープン当初から「カントゥッチ」作りを任されてきた娘さんは現在Calenzano(カレンツァーノ)に新設した卸売向けの工房を切り盛りしています。今後は、工房にバールやジェラテリーアを併設したカフェテリアとして9月1日のオープンを目指しているそう。これまでの店舗では現在アレアンドロさんの甥っ子Stefano(ステファノ)さん(写真左)が、毎日こちらの店で「カントゥッチ」作りをしています。若いですが既に職人歴15年。そんな彼が「カントゥッチ」のつくり方を説明してくれました。

薄力粉、砂糖、塩、ベーキングパウダーにはちみつを入れて数十秒かき混ぜ、アーモンドを足してさらに数十秒、その後卵黄、卵白とそれぞれ材料を加えながら、数十秒ずつかき混ぜていきます。分量としては1kgの薄力粉に対し、卵12個、アーモンドは他店よりも多めの900g(1kgの小麦粉に対し500gアーモンドを混ぜるレシピが多いらしい)。バターや油などは一切入れません。そして、ここで特に注目したいのが、使っているベーキングパウダー。トスカーナ州でしか売っていないというBicarbonato ammonio(ビカルボナート・アンモニオ)というアンモニアが入った重曹を使用していました。科学的に作られたものよりもよく膨らみ、同時に保存料の役割もしてくれるのだとか。そのため、保存料などは一切使用していません。こうして混ぜ合わされた何キロもある生地を取り出して、いとも簡単に手際よく直径4cm程度の棒状に伸ばしていくステファノさん。その様子に足を止め、興味深く見入る観光客もたくさんいます。

この店では生地作りの仕上げに、卵白を塗り、ザラメをぱらぱらと振りかけるというひと手間を加えています。ツヤよく焼き上げ、食感の楽しさを演出するためだそう。そして、生地を12分オーブンで焼き、午前中は生地の粗熱を取るために冷まします。そして、午後にすべて手作業でカットしているのだそう。ここで「えっ?」と思った私。
「一般的なカントゥッチの作り方ではオーブンで2回焼くようなのですが、ここでは焼かないのですか?」とステファノさんに聞くと、
「2度焼きすると水分が蒸発して硬くなるから一度しか焼かないよ」とのこと。柔らかさの秘訣はここにあったんですね。こうしてできた「カントゥッチ」が、こちらの4種類。

写真左上から下に向かって「Cantucci alle mandorle(アーモンド味)」、「Cantucci ai fichi secchi e noci(いちじく&くるみ味)、「Cantucci al cioccolato e scorza d’arancia candita(チョコ&オレンジピール味)、「Cantucci al cioccolato fondente e nocciole tostate(ブラックチョコ&ヘーゼルナッツ味)」。各種 150g 3.6ユーロ、250g 6ユーロ、500g 12ユーロ、1kg 24ユーロ。※開封前の賞味期限は3ヶ月。

ひとつ口に入れてみると、どれもやわらかい食感! 今まで食べていた「カントゥッチ」とは全く別の食べ物です。ざっくりと混ぜ合わさった素朴な生地の食感を楽しみながら、口の中に広がるザラメがアクセントに。特におすすめのフレーバーは、アレアンドロさんも一番のお気に入りだという「いちじく&くるみ味」。くるみの香りといちじくの甘さが調和した一品。ほかにも「カントゥッチ」の店でよく見かけるアーモンドの焼き菓子「Brutti ma buoni(ブルッティ・マ・ブォーニ。「不細工だけどおいしい」という意味。写真左上)」もありました。「La Mantovana(ラ・マントヴァーナ)」というケーキと「Pan Briaco(パン・ブリアコ。「酔っぱらったパン」という意味)」も是非味わっていただきたい。どちらもナッツ使いが絶妙で、ケーキはマドレーヌのようにしっとりとして、舌の上ですっと溶けていき、スライスしたアーモンドの香ばしさが美味。「パン・ブリアコ」はくるみやアーモンド、レーズンが入って、Archermes(アルケルメス)というリキュールの香りが豊か。ナッツ類が好きな人、そして「カントゥッチ」作りの様子(午前中)を見たいという方は、是非この店を訪れてみて。
 
>>2軒目に伺ったのは、「ダ・ミリアーナ(Da Migliana)」

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  • Il Cantuccio di San Lorenzo(イル・カントゥッチョ・ディ・サン・ロレンツォ)
    Via di Pratignone, 62, 50041、Calenzano(FI), Italia
    tel. +39-055-290034
    営業時間/8:30~19:30 日曜は、9:30~18:30
    定休日/7月、8月は日曜日。1週間の夏季休暇有
    http://www.ilcantucciodisanlorenzo.it/
     
    Da Migliana(Biscottificio del Cantuccio Srls)(ダ・ミリアーナ)
    Via Nazionale, 121/R, 50123 Firenze, Italia
    tel. +39-055-283566
    営業時間/10:00-13:30、15:30-19:30
    定休日/火曜。8月は夏季休暇
    http://ilcantuccionyc.com/
     
    Biscottificio Antonio Mattei(アントニオ・マッテイ)
    Via Ricasoli, 20, 59100 Prato, Italia
    tel. +39-0574-25756
    営業時間/8:00~19:30 土曜は、~13:00、15:30~19:30 日曜は、~13:00
    定休日/月曜
    http://www.biscottimatteideseo.it/

  • Mari●大手経営コンサルティング会社にて経営コンサルタントとして勤務後、2006年に渡伊。2人の男の子のマンマをしながら「フェリチターリア」の通訳者・翻訳者・個人旅行同行アシスタントとして、「食の都」ボローニャを中心にイタリアの魅力を発信中。
    http://www.felicitalia.net/

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