シェフが自ら食材集め。美食の始まりはこんなところから
　
旅人が温泉や部屋でくつろいでいる間、「別館 ヴィラ・デル・ソル」のシェフ、金野茂さんは近所の「谷口農園」へ。西洋野菜やキッチンハーブを何十種類も育てているこの農園でその日の食材を摘むのがシェフの日課だという。サラダに使う葉野菜として、砲弾の形をしたチコリ「プレコーチェ」、菜の花に似た「チーマ・デ・ラーペ」、岡ひじきのような「アグレッティ」、紫色の水菜、ほうれん草のスプラウト「オレッチレッド」、牡蠣の味がする「オイスターリーフ」など、都心のレストランでもあまり見られない珍しい野菜を次々とかごに収めていく。朝露がはじけるような新鮮さは野菜だけでなくハーブも同様で、ハーブティー用にと、レモングラス、レモンバーベナ、アップルミントなどもたっぷりと収穫された。この後、シェフは漁港へと車を走らせるという。都会では実現しにくい“シェフ自らによる食材調達”が、ここではごく日常のこととして行われているのだ。

シェフ自らが収穫する野菜やハーブに加え、目の前の相模湾で獲れる魚介の幸も楽しめるようにと、「界 熱海 別館 ヴィラ・デル・ソル」では、“海のフレンチ”と銘打ったコースを提供する。全6皿の「スタンダードフレンチ」（￥10,000／税・サ別）と、全9皿の「シェフズスペシャリテ」（￥15,000／税・サ別）は、ほぼすべてが美しい魚介料理で構成される。この日は「シェフズスペシャリテ」を選び、合わせるワインも料理に合わせてすべて白をチョイス。軽やかな一皿、こっくりとした旨みにあふれた一皿、心憎い切れ味のある一皿……と、一口に「魚介料理」といってもさまざまな味わいがワインと共鳴し、目も舌も魅了してくれる。ちなみにこのレストランは、宿泊者以外でも利用可能。当日14時までの要予約となっており、「思い切って、今日の夜は熱海ディナーにしよう！」といった使い方もできる。22時半の新幹線に乗れば23時過ぎには品川に戻れるこの地ならではの使い勝手のよさかもしれない。

「界 熱海 別館 ヴィラ・デル・ソル」のリピーターたちが絶賛するもうひとつの楽しみ、それが「海のブレックファースト」だ。ディナーと同じく館内の「レストラン南葵文庫」でいただく朝食だが、遠くに大島、目の前に初島が浮かぶ相模湾を眺めながらのゆっくりとしたおいしい時間は、他では味わえないラグジュアリーな喜びを与えてくれる。こちらも、金野シェフが収穫した野菜やハーブが満載のメニューとなっている。特筆すべきは、体を目覚めさせるように美味なクラムチャウダー。小麦粉でとろみをつける代わりに、スープ自体をブレンダ―にかけてカプチーノ仕立てにしてあるので、胃にもやさしく体にするするとしみわたるよう。絞り立てのオレンジジュースに始まり、サラダ、クラムチャウダー、自家製コンフィチュールを合わせる焼き立てパン、スクランブルエッグと鎌倉ハム、自家製のヨーグルト、紅茶・コーヒーで構成される朝食を、波の音を聞きながらゆっくりと味わっていると、まるで別世界にいるかのような気分に。

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