“ホームレスモデル”で話題。辛すぎる男性スーパーモデルの世界
2015/08/21(金)
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『Homme Less』公式HPより

「私はモデルでホームレス」

男性のモデル業は女性と比べて結婚という「あがり」もなく、また同性である男性からも、異性である女性からも、「まともなキャリア」として見られない。それゆえに、若い間だけお金の為にアルバイトや俳優やフォトグラファーに転身する為のつなぎとして、学業のかたわら短期間だけ行う人が大多数。しかもギャランティが低く、欧米の大手モード誌は、ギャラなしということも多々ある厳しい現実が。なので、キャリアを積めば積むほどキャリアチェンジの落とし所が難しくなるという点が……。

 
この厳しい現実を描いた映画『Homme Less』(homelessと男性を表すフランス語hommeをかけたもの)が8月7日(金)にアメリカで劇場公開され今、話題。
 
 

from Filmfestival Kitzbühel on Vimeo.

 

Photo : Getty Images

身長188cm、52歳になる現在もモデルとして働く、俳優で写真家のマーク・リーイ。丁寧に整えられた裕福そうなロマンスグレーの髪やそのダンディな立ち姿は、とてもホームレスには見えない。でも、これこそが男性モデルの裏と表を表していると言う人も。「NYポスト」紙に、彼が語った経歴は、その過酷ぶりに思わずのけぞってしまうほど。その経過を見ていると、いかに男性モデルのシフトチェンジミスが、その後のキャリアの命取りになるかを垣間見ることができる。
 
「(今の悲惨な)生活は南フランスで過ごしたまったく金にならない夏を過ごしたことが始まりだった。そこでフォトグラファとしての仕事が見つかると思っていた。それ以前は、サウスカロライナ州のチャールストン・カレッジを卒業した後、モデルとしてまあまあの金を稼いでいた。そうして20代半ばになるころには(フランスに渡り)、ジャンニ・ヴェルサーチ、フランコ・モスキーノやミッソーニあたりのランウェイを歩くようになっていたんだ。フランス版『ヴォーグ』にさえ載ったこともある。その時のギャラは60ドル(約9000円)だったけど。当時の年収は約10,000ドル(約150万円)。ひとりで暮らし、旅をするのにぎりぎりの額。ファッション業界にいる人なら誰でも知ってると思うけど、6桁から7桁の小切手が来るような幸運に恵まれることはまれだよ」

『Homme Less』公式インスタグラムより

パワーモード誌仏『ヴォーグ』のギャランティが1万円も行かず、しかも150万円で1年間を過ごすというギリギリの生活を送っていたマーク。しかし、その後年齢を経ていく過程で、もっと厳しい生活が待っていた。

「90年代の後半にはニューヨークに戻ってケータリングの仕事をしながら、時々俳優として仕事をしていた。当時はチェルシーの家賃175ドルの小さな部屋に住んでいたよ。だけど高級住宅街化の宅地開発の対象になって、30,000ドルをもらって引っ越さないといけなくなった。その金を持って、バカンスと写真の勉強を兼ねて、リオデジャネイロに飛んだ。そこは楽しかったよ。僕はほら、どんな物にも縛られないタイプの男だから。女性と真剣な交際に発展したことは一度もないし、家族よりほかに、僕を愛しているといってくれるひともいなかったしね。

僕は『デイズド&コンフューズド』の依頼で、2009年のニューヨーク春夏ファッションウィークを撮影することになった。7日間のファッションウィークをすべてカバーしてギャラは700ドル。ウィリアムスバーグの一晩30ドルのユースホステルに移ったんだけど、ベッドに住み着いた虫に噛まれまくって、48時間後にはそこを出たよ。この地球上に僕がいけるところなんてあるんだろうか?って考えたよ。友達の家を荒らしたくなかったから、野宿するほかないような気がしたんだ。

そのとき、自分がアルファベット・シティ(スラム)の5階建てのビルに住む友達のロビーの鍵を持っていた事を思い出した。それで、彼にも知られることなく、そこの屋上で夜を過ごすことにした。

屋上には柵でかこまれた小さなスペースがあって、誰からも見られずいられる場所があった。そこへ行くにはフェンスにつかまって、危ない縁を歩かないとたどり着けないんだけど、だけどその8フィート×3.5フィートの三角形をした場所だけが、僕の安全とプライバシーを守ってくれる場所だった。雨を遮るために防水シートを張り、夜はプラスチックの空き瓶がトイレ代わり。でもそこでよく眠ることができたよ。そこで6年間も過ごすはめになるなんて思ってもいなかったけど、だけど結局はそうなった。その時にはもう、最低賃金はおろか生存ぎりぎりの生活で、自分の名前で稼げる仕事もなくなった。時々入る収入はジムの会員費とロッカー、携帯、そして健康保険と食べ物をぎりぎりカバーできるくらいだった。」

ホームレスをしながら、公衆トイレでグルーミングをして、キャスティングにでかけて、日々の生活費を稼いぐという生活を送って2年、精神的にも追い込まれたと言うマーク。そこで、同じく元モデルで、映画監督に転身したトーマス・ワーデンソンと出会い、ドキュメンタリー映画に出演することになった彼は、現在時々実家で暮らしたりしながら、モデルや写真家として仕事をしているのだとか。現在52歳。今後もこの仕事を続けるそう。ただ、いつまで続けられるのか、それが心配。

>>次のページから歴代男性スーパーモデルの成功&しくじり人生を紹介!

Text : Ryoko Tsukada

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